壁の言の葉

unlucky hero your key

 曖昧な記憶のみで書こうと思う。
 なので、断言はできないのだが。
 NARUTOのあの走り方。
 両腕を後方へ伸ばしっぱなしにする走り方は、アニメならではのものだったような気がする。
 原作漫画であれを見た記憶が、とんと無いのだな。
 どうすか。
 それが正しいとすればだ、あの有名なポーズはアニメスタッフの功績ではないのかと。
 キャラデザさんでしょーか。
 すばらしい。
 おそらくはいわゆるナンバ走りなどと言われる昔の日本人の走り方からヒントを得たのではないのかと思われるわけで。
 飛脚がそうだったのではないかとされているよね。
 体操や運動という概念が輸入される前の動きだ。
 上半身と下半身を交互に常に逆方向にねじる。つまり右手と左足を前。次はその逆という具合の兵隊の行進式の歩き方の歴史は、実は浅いらしい。
 この行進式の歩き方(走り方)は平坦な道をただ移動するだけならば問題が無い。
 けれど、飛脚などがひた走ったはずの舗装されていない山道やあぜ道、河原や砂地、雪道やどろんこ道では不安定になるのですな。
 重心が振り子のように左右に揺れるのと、ひねった体勢なので、転びやすい。
 そこへいくとひねらない昔の日本人の歩き方は、重心が常に身体の芯近くにあるし、上体が前方に正対したままなので安定すると。
 ナンバ走りの解説でよくいわれる身体への負荷云々ではなく、あたしゃこの安定性の優先こそがその理屈だと思ふのだ。
 なぜって、ここ数日の大雪でみんな実感しているでしょ?
 足元が悪い時の行進式の歩行は転倒のもとだと。
 両手を振って歩いたりはしないでしょ。
 実はこれ、雪でなくとも普段から知らず知らずにやっていることで。
 たとえば荷物を運ぶ時。
 トレイにのせた食事をテーブルに運ぶ時。
 子供を抱いた時や重いバックパックを背負ったとき。
 スマホを操作しながら歩くとき。
「かわいこちゃんはっけ〜ん」
 と遠くを望みながら歩くとき。
 つまり移動のためだけでなく、移動しながら何かをするときは上体を振らないのね。
 よってNARUTOのあの走りは、うしろに手を差し伸べているのではなく、だらりと力を抜いた両腕があまりの速度のために後方へなびいているイメージなのだと思う。
 移動中の攻撃や迎撃に瞬時に対処できるように、常にフリーにしているわけ。
 戦闘態勢の走り。


 とここまで書いてNARUTOより先にそれをやっていた漫画を思い出した。
 きーーーーーーーーん、と両手を翼にして走るアラレちゃんだ。
 歩き方も走り方も教わる前にいきなり、きーーーーーんだった。
 無自覚の戦闘態勢だった。




 




 最強っす。



 ☾☀闇生☆☽