壁の言の葉

unlucky hero your key


 兄から今年も『紅はるか』ちゃんが届く。










 






 干し芋の高級ブランドではあるまいか。
 むかし実家で親が与えてくれた尻尾ばかりの屑っぽい乾燥芋とはまるで品質が違う。
 もおね、羊羹みたいなの。
 噛んでるうちに餡子みたいになってきて。
 かつての屑乾燥芋は硬かったのよ。
 そのままだと顎が痛くなって。
 なのでそれを石油ストーブの上であぶってさ。
 これを地元では『炙り』っていうんだけどね。
 炙りでイク? みたいな。
 言わないけどね。
 するとねずみ色になった屑でも黄色く輝いて柔らかくなるわけ。
 あま〜くなってくる。
 地元の市民マラソン大会では、完走者に配られたものである。
 完走と乾燥いもをかけて。

 ともかく、ありがたし。
 曰く『横田さんの美味しい干いも』である。
 横田さんちに育てられたはるかちゃんではあるのだけれど、紅さんなのである。
 そこは事情があるのだろう。
 

 で、
 姉からは今年もりんごが一ケース。
 これは毎年食べきれずに痛ませてしまっていて。
 むろん痛んだのはあたしの心だ。
 毎日一個ずつやっつけていっても月の半ば頃にはふわふわになっちゃっうし。
 噛んだときパキッ、ていわないの。
 カシュッ、カシュッ、って果汁が口中で弾けてくれないのね。
 パキッ、
 カシュッ、カシュッ、
 然るのちにショリショリいってなんぼのもんでしょ。りんごっつーもんは。
 ふわふわではいかんのよ。
 ふわふわでは。
 ましてや味覚的に飽きてくるわけで。
 なので今年はこれにチャレンジしたわけさ。















 はい。
 りんご酒とりんご酢。
 それぞれ五リットルと二リットル。
 これなら持つでしょう。
 具体的な愉しみをひとつ、未来側に留保できることでしょう。
 










 問題は熟成するまで待てるのかと。
 未来はあたくしの自制心にかかっているのであーる。






 ☾☀闇生☆☽