「批判を批判する必要はないわけでね。いいでしょう。そんな考え方もあるんでしょう」
黒澤明はたしかこんな言い方をしたと思う。
『影武者』の完成記者会見で、主役を降板した勝新太郎がその作品を批判したとこをうけての言葉。
勝新のは「あっちが世界のクロサワなら、こっちは天下のカツシンだ」だったか。
あるいは俺の方が信玄にむいている的な、主役を指してのものだったか。
なんにせよ勝新らしい勝新節だったことは確かで、降板しても勝新を演じ続けたものだった。
このやりとりでもっともお間抜けだったのは黒澤でもなく、勝新でもない。
それをご注進よろしく投げかけた記者の野暮天だったことは覚えている。
ふとこれを記したくなったのは、ネット上での批判(誹謗中傷は論外だが)にいちいち批判し返す著名人が多いなあと感じたから。
プロとは批判・批評されるものなのです。
批判され批評にもまれてこそプロなのです。
ましてや批判・批評の域にも達しないガヤなど捨て置けばいい。
きちんとした批判や批評、あるいはあまりにとんちんかんな与太話は当人ではなく公が精査して俎上にあげるはず。
ちなみに素人芸は、批判すらしてもらえません。
せいぜいが御世辞どまりでしょう。
語られるその場で、はじめて作品になっていく。
☾☀闇生☆☽