いまさらですが、
漫画『DEATH NOTE』を読了しました。
当時は流行りすぎててかえって手が出せなかったのだ。
そこに名前を描かれた人は死ぬという死神のアイテム、デスノート。
それを手にしたがために正義による征服にとりつかれる独善的主人公キラ。
その彼を追う天才探偵の頭脳バトルが醍醐味の一作ですな。
世の犯罪者たちを天罰のごとくに殺戮していくキラを、大衆はおそれ、やがて神格化する。
絶対的な力、恐怖によって征服するのをたしかリヴァイアサンといったと思う。
ようするに覇権主義というのは、一面的な正義観・価値観だけで地球をグローブするということであり。
そんな事ごとを念頭にしつつ読むと、少年ジャンプに掲載されていたにしては、ちょっち大人向けの設定かと思ふ。
うん。
NARUTOも『月の目計画』とかいう強制的平和化の構想が悪として描かれていたっけ。
平和と戦争っちゅうもんは、えてして対立概念にはなりえないのね。
自己犠牲という至上の愛が、殺人という具体的行動の形をとることが珍しくないように。
にしても現代の設定でこのあたりのことをやるのには、野心が要ります。
ともかく、
アイデアのミソはこのノート。
そしてそのルールなのだ。
この漫画のなかの絶対はノートなのである。
なのにその大黒柱が毎回のように後付けで付け足されていく。
それが大人向けの設定を複雑化させる。
加えて、状況説明のセリフの言い回しがまるで研磨されてない。
単に、
「二重尾行に気をつけろ」
というセリフとデフォルメキャラでの状況説明カットで済むところを、わざわざ、
「AがBを尾行していることをBに知られて、Bがその手下のB'にAを尾行させる可能性がある」
的な、まわりっくどい言い回しをする個所が目立った。
少年誌ってなによりそこを重んじていると思っていたのだが。
より簡潔な表現を、と。
そうと知ってか後半、ニアがデフォルメキャラの人形を使って推理をし始める。
んが、
それもあまり活きていない。
思うに、原作者と作画のディスカッションが足りていないのではないかと。
そこはセリフでなくて漫画で表現するとこでしょ、的に思うことが多々あった。
それからキラが悪者を裁く情報源が、マスコミだという点。
ここが気になる。
ニュースでそれを知るや、ただちにキラは情報を鵜呑みにしてノートに犯罪者の名前を書いている。
あれほど知的なヒールなのに『誤報』という視点は無かったのか。
そうなると神格化されていくのはキラではなく、実はマスコミなのではないのか。
情報を操れば、キラをも操れるのだから。
実際に最初の方で探偵Lはマスコミの信頼度を逆手にとってキラが日本の関東に居住することをあぶり出している。
この視点を広げていったほうが、重層的になると思うのだが。
情報に踊らされるキラというね。
逆に言えば、絶対的なデスノートに立ち向かうすべがマスコミ操作という。
マスコミが死神さえも翻弄する皮肉。
ほかでもない、近年でも松本サリン事件での苦い記憶がある日本だ。
そこにブラックなオチを期待したのだが、棚上げされたまま終わってしまった。
それと名前と顔がキーポイントになるという点。
これをキーにしたのはうまいなーと。
ただし現代のネット上の匿名性。匿名社会の問題も触れてくるかと思いきや、無かったねえ。
たとえば誰もがキラやキラへの密告を恐れて匿名が当然になり、花粉症対策のマスクよろしく覆面が流行するとか。
我も我もと整形が流行るとか。
よって身分証明という社会を支える根柢の相互信用がぐずぐすに揺らいで荒廃していくところとか。
つっこんでほしかったなあ。
エンタメとして。
キラ。
あえて無理に生かして、生き地獄を見せてやるというオチもあったかも。
探偵側ではなく、あえて悪側を主人公にしたのが勝因でしょうね。
しかも徹底した冷血漢に。
☾☀闇生☆☽
遺体の見つかっていないレイ・ペンパーのフィアンセはゆくゆく再登場してくると思ったのに。。。