テーブルと椅子があって、二、三十人が昼食をとれるようなスーパーの従業員控室。
年末年始商戦の真っただ中ということもあり、昼時ともなれば精根すり減らした戦士スタッフたちが言葉も無くそこで飯を食い、束の間突っ伏して仮眠を貪ってはまた売り場へと戻っていく。
そこへツカツカっとやってきたパートのおばちゃんおねえさん。
普段、物静かな彼女だが、
空いた席を見つけてそこに弁当を広げるが早いか、断りも無くリモコンを使って
「ぼつっ」
テレビをつけたのだ。
大音量でとどろく「いいとも」的なバラエティ。
スタジオ観覧客の笑い声。
CMの喧騒。
何ごとだと目を覚ます仮眠中の精肉コーナーの店員。
食い入るように見つめていた帳簿から目をあげるチーフ。
おばちゃんおねえさん、文字通りのわき目もふらず、といった態で画面を注視しながら飯を食っている。
シモネタにも真顔で対峙しつつ、お茶で口をゆすいでもいる。
くぷくぷいってる。
つええな、と思った。
あれには勝てぬ。
なんだろう。さながら信仰にも似た、と言おうか。
ヒーターがあることに気が付かずに凍えている人たちのなかで、そのスイッチを入れてあげるような正義感にも似た、と言おうか。
あたしもあきらめて本を閉じた。
この状況で何ができるか模索した。
新聞を広げた。
ケータイで天気予報をチェックした。
メールを書きかけて、やめた。
意味も無くメモ帳を繰ったりした。
目を閉じた。
そこで気がついたのだ。
なんかぷよぷよ的な、テトリス的な、その程度のうっすい気晴らしこそがこの状況への『正解』なのだと。
でだな、
おそらくはそのおばちゃんおねえさんにとってのテレビというやつも、そういう存在なのだ。
ぷよぷよなのだ。
控室の鬱陶しい空気への風穴であり、ささやかな換気なのだ。
無自覚なる、闘いなのだ。
おばちゃんおねえさんは闘っているのである。
世界の退屈と。
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あの背中は、戦士の背中だね。
ジャンヌ・ダルクだよ。
そんなこんなで、
早めに切り上げて持ち場に戻った。
昼飯時にそんな聖戦に付き合わされても、
有体に云って、めんどくさい。
未明に初詣は済ませたし。
昨夜はそばも食ったし。
大晦日から三が日いっぱいは勤務である。
正月気分のサンデードライバーほど怖いものは無い。
みなさん、ご安全に。
今年もおつかれ。
して、おばちゃんおねえさんもおつかれ。
☾☀闇生☆☽
おっさんも、おつかれ。