壁の言の葉

unlucky hero your key

 そもそも、
 自分へのご褒美という概念になじめない。
 こっ恥ずかしい。
 よって、
 ひとりもんとしての誕生日は、いつもこれといってすることもなく。
 なし崩し的にスルーしている次第であーる。
 けれど、
 それがいけないのではないかと思ったね。このたびは。
 仕事帰りに立ち寄ったいつものコンビニ。
 滅多に興味をもたないすいーつ系の棚のまえで、ひとりそんな思いに駆られて立ち止まる。
 そういう行事というものは、褒美うんぬんは別にして節目なのだよ、きっと。
 そいつが時間の経過を意識させるのではないかと。
 これ、重要なことなのではないのだろーか。
 ウエストがあってこそ、バストとヒップは分かたれるように。
 それがないために、だらりだらりとしてしまうのではないだろーか。
 そんなあたしの思いなどつゆ知らず、
 我が贔屓のコンビニの女子店員さんたちは、今日もそろいもそろって美人ばかりだ。
 美人だらけで。
 美人まみれになる。
 哀しいかな、そのためにひと際目立ってしまったもっとも冴えないメガネの女子店員ちゃんが、もっともハツラツとして仕事を楽しんでいるのは、なにゆえかと。
 えてして美人がブスッとしていて。
 はからずもブスが一番輝くと。
 母曰く、ブスッとしているのをブスといふ。
 あたしゃそんなあんたを直視できんよと。
 まぶしすぎるぞと。
 おそらくはそれが、なんかしらんが、そういう気分にさせたのだな。
 例の「元気もらいました」とコメントしてしまうノリだ。
 支払いの時にカウンターでそう言ってやろうかと。


「元気もらいました」


 ておっさんが。
 言うな言うな。
 んが、そんなキャラでいこうかと。
 脈略も無いが、それでいいじゃんかとやっつけた。
 つまりショートケーキを買ってしまったのだ。自分に。
 なにやってんだ、おれ。




 夜更け過ぎ、安物のワインで酔っ払って。
 ここぞとばかり、シメでそのケーキに手を出した。
 いまにして思えば嫌な予感はしていたのだ。
 手にとってケーキの透け透け下着を、
 もとい、
 断面をぐるりと覆ったセロファンを、はがしたときだった。
 

 ぼてっ。


 床に落としてしまった。







 なにやってんだ、おれ。











 深夜。
 Pat MethenyのAlways And Foreverを聴く。
 潮のように満ち引きするストリングスに胸騒ぎ、
 Tootsのソロに、またしてもむせび泣く。
 
 


 ☾☀闇生☆☽