あたしゃエロDVD屋の店員であーる。
勤務する店ではむろん通販も扱っている。
驚くのは、いまでも電話で注文をしてこられる方が少なくないこと。
もはや時代はネットで動画にありつけるのではなかったのか。
それをあえてアダルトのパッケージ売りで凌いでいこうというのだから、商売としてどうなんだといわれりゃ、まあ、そうなんだとしか言えない。
すまん。
んが、
それはこの際いい。
エロなんてもんは、親しんだ炬燵からなかなか出られないような、馴れだか狎れだかに拠って勃つ部分があるのだろうから、どうしたってそうなるぞと。
でそういうアナログな貴兄のおかげで、商売が成り立っているし。
そのおかげで食えている。
ありがたし。
にしてもだ、大概のお客さまはネットでご注文をされるのだな。
我々はメールで受注して、荷造りをして、発送して、その旨を返信メールにしたためる。
受付がメールだからして、カウンター業務の差しつかえにはならない。
通販の処理は、あいた時間でやっつけていく。
受注内容その他も、メールに残るから間違いも少ない。
ところが、電話となればそうはいかない。
希望される商品の品番の聞き取りひとつをとっても時間を奪われる。
『T』と『P』、
『B』と『D』、
『L』と『M』と『N』は聞き誤りやすいので、いちいち復唱と確認がいるし。
住所氏名の漢字もまたそうだ。
タイトルしか知らない、という方も多く。その場合はさらに面倒になる。
念の為に言っておくが、双方にとっての面倒ね。
今のアダルトのタイトルって、どこからがタイトルなのか明確でないのが多いのなんのって。
酷似したものも少なくないし。
その応対の間に店頭接客、レジ作業を挟まなくてはならなくなることもしばしばで。
そのうえ、電話受注のあいだは回線が塞がってしまうから、他の問い合わせや、メーカーとのやりとりも遮断されてしまう。
店へのアクセスの問い合わせも、正直、やっかい。
駅の何口をおりるのかも調べずに、取り敢えず下車してしまい。
それから電話をしてこられる。
「今、なんか茶色っぽいビルのそばにいるんですけど」
山ほどあるわ。
これもあれだ、今なら現在地はもちろん目的地への道順なんかはケータイで簡単に調べられるはずだしょ。
なのにご自分がどこにいるかわからない人を、電話で誘導しなくてはならなくなるとは。
誘導される当人の困惑も考え合わせると。
いやはや。
それも、カウンター業務のかたわらである。
そのとき、レジを待つ方がおられたならば、なおのこと、つらいと。
すびばせん。
エロの情報源としてもネットが主流であろう。
大方が、ネット上でそれを知って、ご注文なり、お問い合わせをくれる。
んが、
電話派は、違う。
雑誌の広告だとか。
エロDVD屋店頭の無料チラシを豆に拾って、問い合わせてくる。
それはまだ目的が具体的だからありがたいのだが、問題は、ご自分が何を買いたいのか明確でない場合。
「新しいやつで、ハードなの。なんか無い?」
「猿轡系で、あたらしいの」
んなこと言われたって、ぴんきりである。
ハードの加減だって、主観によるでしょうが。
シチュエーションも出演者もひとつひとつが異なるし。
いくら丁寧に内容の説明をしたからって、百聞は一見にしかずではないのか。
何万語を費やして説明しても、ご期待に沿うのは、無理。
なのにそんな注文で「送ってくれ」と。
勘弁してくれ。
送ったはいいが、「前に観たことあるやつだった」「ちょっと違う」なんて言われて、返品されるのはかなわんのだと。
いや、
事情が事情だから返品を強いる人は滅多にいないが、売り手としても、お客さまとしても気持ちよくないでしょうに。
と、思ふ。
店頭のビラだけを全種類収集して街をまわる人たちがいる。
リュックのなかは各店からゲットしたビラでぱんぱんである。
何も買わず、
店内も見ずに、
ビラの入ったマガジンラックだけを漁っては、去っていく。
あの人たちは、いったいなんなんだろう。
アナログな民のおかげで食えているのに。
ううむ。
こういうのジレンマというのか。
☾☀闇生☆☽