壁の言の葉

unlucky hero your key


 コンビニの店頭ダストボックス。
 ペットボトル用のそれは、キャップと本体の投入口が別になっている。
 けれど覗いてみれば、あ〜ら不思議。中はつながっており。


 なーんだ意味ねーじゃん。


 とそれを同僚が笑って報告してくれた。
 つられて笑いつつ、ふと考えてみれば、しかしそこにちゃんと意味があることに気づく。
 ゴミの少量化と分別のために再三にわたってキャップを外して捨てろとキャンペーンしているにもかかわらず、それをしない我々おバカさんのためなのだなと。
 おまえら言葉じゃ通じんのかいと。
 この際、ラベルはがしは諦めたと。
 せめてせめて、キャップぐらいは、と。
 なんだろか。
 あの、電車の座席詰めをアナウンスで啓蒙するのではなく、シートの色を変えることでどーかひとつと、無意識だか無自覚だかにうったえるあの祈りにも似た、工夫。
 あえて意地悪くのたまうならば、これらは人間を動物・畜生にみなした、やっつけでもあり。
 羊飼いと羊であり。
 どちらかといえば、性悪説の観点によるもので。
 おそらくこの手の『上から目線』というものは、ひとつの学問にはなっているのだらう。


 んで、


 社会という名の遊技場での、もてなす側と、もてなされる側との差異とは、つまりまあ、そんなものなのだよと。









 その自覚のあるなしで、個人の自在度は。
 いや、少なくとも自在観は、
 んな言葉は無いはずだが、まあ劇的に変わると。





 ☾☀闇生☆☽


 追記。
 捨てられるペットボトルの立場になって想像をめぐらせた。
 そんなものに立場なんぞあってはたまらないが、まあ、してみた。
 すると、さながらこれは『注文の多い料理店』の世界ではないか。
 キャップは帽子掛けへどうぞ。
 ラベルをお脱ぎください。
 身体の中を洗ったら、できるだけおなかを凹ませてお進みください。
 

 そういや、
 歯科医の治療室の前で、ロングブーツを脱ぐのを拒んでダダをこねている女性患者を目撃したことがある。
 看護婦さん困り果ててました。
 まず予約した時点で、ロングブーツはないだろ。
 シュールだよね。
 ブーツ履いたまま治療を受けている姿は。