震災で一時的に途絶えはしたものの、ケービの仕事は少しずつ復調しはじめている。
むろん、そうはいっても決して全快ではないと。
現場によっては必要な資材が入らず、
そのために中止になってしまう場合が珍しくない。
なので、
希望した勤務日すべてに仕事をもらえるわけではないのだ。
小耳にはさんだところでは防水屋さんの資材の一部と、床材の一部が滞っているという。
おそらくは他業種、他業界でもそんな震災の二次的、三時的被害を被っているところがあるはず。
それは飲食業界を含めてこれからもっと増えてくる可能性があるわけで。
だもんで、
その前段階としてまたもや派遣切りやリストラが増加する見込みだという。
やだやだ。
暗い話ですまん。
いやね、
そんな世知辛い状況だというのにね、
それらをふまえて皆さんはそれぞれの現場で、それぞれの額や脳みそに汗しているのだと、あたしゃてっきり思いこんでいたのにね、
いるんですな、ズレちゃってるのが。
やれひとつになろう、だの。
ひとりじゃない、だのと繰り返されるメッセージに、あたしゃ必要以上に煽られているつもりはないのだけれど。
涙もろいので、そういうのは背中で聞くことにしているのだけれど。
少なくとも自分の職場では暗黙のうちに、そういう、
なんてんだろうか、
つまりそのぉ、
連帯、……的なあ、
嗚呼、言わんでもええ言わんでもええ、的なあ、
普段はこっぱずかしくて意識すらしない繋がりを、感じちゃったりするもんなのだ。
すくなくともケービという、しがない職業である。
お互いそれなりに事情があることくらいは、察せられようというもの。
なのに、
おまえはガチンコ・ファイト・クラブかと。
そんな奴に遭遇してしまった。
いや、あれはあれでエンターテイメントとして一時代を築きはしたよ。
プロボクサー志望の若者を番組が募って、
そこへ自分から応募してきたくせに、
繰り返す、
あくまで自分から応募してきたくせに、
教師やプログラムに対してやけくそな反抗をしてぶち壊すという。
けど『嫌ならやめればいいのに』と思った瞬間に視聴者の負けなのですな。
なぜなら、
そう思うなら『観なきゃいいのに』ということですから。
同じアホなら踊らにゃ損損♪ 的なスタンスが、あの手の見世物を愉しむマナーなのでしょう。
んで、
辰吉の登場を待つ、と。
反抗的な受講生を竹原がぼこぼこにするのを待って溜飲を下げると。
そういうことになってました。
はい。
貧乏脱出大作戦と同じです。
ざまみろ。だからお前はダメなんだ、という、いわゆる下を見せて視聴者の溜飲を下げると。
なおかつその更生を応援することで己の良心を再確認させると。
んが、
所詮それも上から目線なので見世物は見世物であるわけで。
更生できるかどうかをジャッジするあの雛壇の観客はいったい何様なのだと。
そう。決して批判されることのないお客様なのであーる。
モニター越しに見物している我々とおなじ、お客様なのであーる。
そんな見世物、晒し物的な作りがなにより、あれだ。
えげつない。
話が逸れた。
ガチンコ。
そう、それらはモニターの向こう側の出来事だから、ヤラセであろうが無かろうが、どうでもいいのだ。
どちらであっても、面白ければいい。
んが、
これがもし自分の職場の出来ごとだったら、どうだろう。
どうだろうも、こうだろうもないだろう。
やんなっちゃうよ、ほんと。
最初、そこでぶちまけられている不平不満を耳にして、
そのあまりの幼稚さに、
さてはミニコントをおっぱじめようというんだなと、闇生はほくそ笑んだ。
ほほほ。
ノリツッコミで参加したろかと。
それくらい、おこちゃまな文言だったのだ。
なんせ全社一斉の衣替えについての不平なのだからして。
夜勤はまだ寒いんでちゅと。
寒くて誘導の動きが鈍くなってもいいんでちゅね、とキレたのだ。
ぴよこ隊である。
蒙古斑まるだしなのであーる。
あたしの脳内ではこう翻訳されたが。
「こんどお弁当にピーマン入れたら、口きいてやんないからね」
はて。誰に確認をとっているのか。
誰の損得に影響しているのか。
いいもなにも仕事ができないヤツには仕事が来なくなる。
それだけだ。
このご時世、使えない奴がいなくなったところで会社が困るわけがない。
仕事の方が少ないのだから。
ましてや現場から「あいつ二度と寄こすな」の一報が入ることは、珍しくないのだし。
「チェンジ!!」
いわばデリヘルのようなものなのだと考えていい。
その喩えは、どうなんだ。
ケービ員というのはね、
その誘導の技術はむろんだが、
装備やふるまいも含めてが商品なのであーる。
発注をいただいて、決められた期日にそこへ届けられる商品だ。
だからといってなにも人格を無視しろというわけではないのよ。
代金をいただく商品である以上、顧客に対してその品質が (少なくとも金額分は) 保証されていなければならないということ。
なのに、おまえひとりだけ冬服かいと。
(ちなみに装備についてはケーサツに届け出てあるとおりでなくてはならない)
サンプルと実物が違うということを、人はぼったくりといふ。
そいつの装備の着こなしったらないわけで。
いい大人が、ずるずるとだらしがないのだ。
ま、内勤者から注意を受けてましたが。
案の定、ふてくされてましたわな。
たしかに勘違いな奴は結構いるよ。
てか、いた。
ただ立っているだけなんだと思ってました。
多いんだ。こういうの。
先日一緒についた熟女の新人さんもそう洩らしていた。
装備品の不備から誘導の仕方、勤務態度に至るまで、目に余ったのでいちいち指導させていただいたが、それに対する質問や疑問は投げかけてくれるものの、反論のための反論なんぞついにひと言もなかったわな。
なぜなら基本的に仕事がしたいからである。
目指すところはいっしょ。
あったりまえだのクラッカーだ。
話を戻そう。
なんでもそのぴよこ隊、
余所のケービ会社から移ってきたのだという。
なんで移ったのか、想像できてしまうわな。
見かねた大大大先輩が内勤者にプレッシャーかけてました。
「あんなのにも仕事まわすの? このご時世に?」
おっしゃる通り。
同じ現場で組むのは、ごめんだ。
誰もが嫌がるはず。
アレと組むくらいなら仕事が無いか、下手ながらも意欲のある新人のほうがよっぽどいい。
んで、
つくづくと思うのだ。
嫌なら辞めればいいのに、と。
あたしにとってこれはモニターの向こうでのことではない。
リアルである。
『観なきゃいいのに』では済まされない。
ついでだから、テレビ番組について。
オーラの泉、というのがありましたな。
あれについて、
オーラや前世がホントにあるのかどうかという問答は、
メラやサンダガが、
もしくは召喚獣シヴァが本当に存在するのかという問答と同じくらい、野暮。
あれは大喜利として観るものなのだ。実は。
相談者の悩みが『お題』で、
それに対する美輪さんと、その隣のふくよかな人の、計二体の召喚獣が紡ぎ出す物語が『答え』であると。
視聴率が座布団であると。
ま、
あたしゃすぐ飽きちゃいましたけど。
☾☀闇生☆☽