最寄駅から三十分も歩けば、その巨大団地にたどり着く。
だもんで、
ケーピの現場へ行くだけで、ひと仕事であると。
もとより連日の高湿度ではないか。
あられもなく、ずぶ濡れだ。
自らの汁でもって闇生、したたっちゃってるのだ。
つらい。
このいけないボディのままに乗り込まなくてはならない帰りの満員電車のことを考えるだけで、つらい。
申し訳ない。
しかもその敷地の広さたるや、十四階建てが十棟ばかり、あいだにショッピングモールや幼稚園、テニスコートまで抱きこんで、見上げる空も広々と。
嗚呼、広々と。
詰所から持ち場の棟までゆくだけでも十分ほども歩かされるわけで。
おまけに職人に付き添って階段を上下するわけでもあるからして。
まあ、あれよ。体液のありったけが、流れ出てしまうわけよ。
飲んでも、飲んでも、水分が小便までたどり着かないという。
けど、
んなこた、どうでもいいことかもしれない。
この、一見うらやましい限りの団地の環境。
しかし、
一歩そのなかに入ってみると、大違いだったのだな。
各階のエレベーターホールには、禁止されているのに自転車が持ち込まれ、山を成し。
なかには明らかに放置自転車と思われるほこりまみれのものも少なくなく。
くわえて冷蔵庫、電子レンジ、バイクのエンジン、使わなくなった子供の遊具までが、無造作に捨てられてある。
片隅にはこんな張り紙もあって、
『この場所で小便をしないでください』
目を疑った。
ほかにも、窓からペットボトルを投げ捨てないでください、なんてのもあり。
工事日程を報せる張り紙は、数日前に放火にあっていた。
残念である。
団地にあこがれる身としては、哀しいばかりだ。
なんか憧れのひとがハナほじってて、んでその獲物を食っちゃったところを目撃しちまった如くの、失望感。
とめどもない。
クーラーが壊れてて、
けどそのままにしているお部屋が多いらしく、
玄関のドアを開け放しているおたくが、いくつもあった。
して、
やはりご老人が多い。
近くの路地ではホースで水を掛け合う子供たちが笑い転げて、道端にはチョークのいたずら描きがにぎやかで、つつましくも逞しい個人店が軒を連ねる商店街もありーの。
とどのまりが、コントラストだ。
うむ。
残念の度合いがまざまざと残ってしまった次第でござる。
☾☀闇生☆☽
昔つとめていた会社の社長の娘が、公然とソレを食う人だった。
遅刻して現れて朝食代わりにポテチを喰らいつつ、役員として仕入れ会議をご見物。
ヒマこいた挙句に、それを食ったのだった。
事務の女の子の、その顔の骨格上の特徴を、公然と嘲笑するようなヤツで。
嘘みたいな話だが、
やがてその娘が経営を引き継ぎ、
しかしそんな輩に人心を掌握できるはずもなく。
会社はやはり残念なことになっていました。