ギレルモ・デル・トロ監督作『ヘルボーイ』DVDにて。
押井守がこの監督を褒めていたので、まずはヒット作からと。
彼はアメリカで『ブレイド2』とこのアメコミ・シリーズを作り、それから母国メキシコで『パンズ・ラビリンス』というダーク・ファンタジーを撮っている。
押井によれば、この『パンズ〜』こそが本来デル・トロが撮りたかった世界だろうとのことだ。
たしかに評価も高いようだし。
それはともかく、
今作は、そこそこの安定感。
武器などの小道具のデザインと、
敵キャラの、特にマスク男の面白さ、
そして薄幸の美女にして『キャリー』的パイロキネシスを持つリズ(セルマ・ブレア)が魅力的だった。
要するに、憎悪を引き金に人体発火をする女。
して、その能力ゆえに抱いたトラウマの心象風景。といったら大袈裟か。「閉じ」と「開き」のメリハリを、さらりと映像的に表現しているところは印象に残る。
夜の病院の庭と、
青天井の下のドライブ。ポラロイド・カメラ。
アメコミだもの、このくらいの塩加減が適量だろう。
そんなリズとヘルボーイの不器用な恋もいじらしく、微笑ましいのだな。
しかしながら、有無も言わせぬ正解にはいたっていない、とも思う。
たとえば入院中のリズが、敵の策略によって能力を暴発させてしまうところ。
病院は壊滅。
となると、他の患者と職員の安否が気になるのだが、まるで触れられていないのは、なぜ。
そこがトラウマのしどこでもあると思うのだが、置き去りにされてしまっている。
あるいは、それをやると重すぎるのか。
味方キャラ。半漁人エイブ。
水槽の外で活動するときはそのエラにマスクを装着する設定らしい。
が、それをつけないでいるときもあり、その区別はなんなのかと。
マスク無しでは地上で活動できない、という具合に一貫させてはどうか。
ならば、それが弱点ともなって、ひいてはキャラが更に際立つはず。
敵キャラ。マスクの男。
胸に埋め込まれたゼンマイ(?)が動力源のようなのだが、それを抜かれても、なぜか動く。
それも、なにかしらの術によるらしい。
ならば、ゼンマイは要らないのかと思うのだが、なぜか奪還してまた装着するのだ。
この男は冒頭から不死身として描かれているのだから、これを弱点として際立たせた方が良かったのではないだろうか。
ヘルボーイと大衆。
ひょんなことがきっかけで魔界から紛れ込んだのがこの、赤肌、二本角に尻尾の大男ヘルボーイ(ロン・パールマン)。
彼は国家の最高機密として密かに育てられる。
しかしなんせ根が魔界の産である。
おとなしくしていられるわけがなく、
時折、施設を脱出しては目撃されて「謎の生命体」などとニュースで扱われたりする。
といっても、いわば「都市伝説」というやつで。
テレビで扱うのはその時に撮影された不鮮明な証拠映像だけだ。
そんななか、
ヘルボーイは敵を追って地下鉄で激闘を繰り広げるのだが、このとき、騒ぎに逃げ惑う群衆に存在を知られてしまうことに。
ばかりか、巻き添えになりかけた猫をかばって、その飼い主とやりとりもする。
あれほど世間で噂された「都市伝説」だというのに、この驚きと、認知の過程が省かれているのは、惜しい。
かといって、世間にすっかり受け入れられたのかと思えば、箱詰めになってこそこそ移動したりしているわけで。
このあたりも疑問だった。
クライマックス。
最愛のリズを奪われて正気を失い、敵の言いなりになってしまうヘルボーイ。
その彼が我にかえるきっかけ。ここにも更なる正解があったのでは。
たとえばアンパンマンなら、ビジュアル的にも分かりやすく演出される。
アンパンの顔が汚れたら、力が出ない。
顔を新しいのに取り換えたら、復活と。
ホウレンソウを食ったら強くなるポパイとか。
そこへいくと今作のように恩人との記憶がその鍵になるというパターンも、確かにある。
けど、このパターンは扱いが難しいのだ。
メリハリがつかないもの。
そもそも我を失った状態から、どうやって正気な記憶を呼び戻すのか。
そのきっかけこそがミソだろうと思うのだが。
十字架を使ったここでのそれは、ちょっと弱いと思った。
もうひとひねり工夫があると良かったなあ、と。
そのほかにも、
なんでリズの服は燃えて消えないの? とか。
いろいろある。
そりゃあ、ある。
ぷるるんっ、とはならんのかいと。
けど、
ポップコーンムービーとしては、いいんじゃないでしょうか。
楽しめます。
二作目のほうが評判いいようなので、そちらが楽しみである。
で、そのあと『パンズ〜』に行く予定。
そうそう。
ヘルボーイのちょんまげ、可愛かったあ。
☾☀闇生☆☽
ツタヤの宅配レンタル。
一番安い、ひと月4枚コースを利用中。
今月はこれにて限度数を終えてしまったので、映画はしばしお休み。
追伸。
冷たい雨風の中のケービは、しんどいっす。