壁の言の葉

unlucky hero your key


 たった今ガストで竜田揚げカレーをいただいてきたところである。
 ああ、カレーってありがたいわ。
 と悦に入り、ひとり糸ようじをくわえている。そんなあたしだ。
 予想外に早く終わった現場のおかげで不意に時間ができたはいいものの、ナリはといえばケービの重装備で自転車である。
 一時間半の道のりを、また帰るしかあるまいと、欲望のもろもろを諦めた。
 けどまあ、こうなれば文字どおりのサイクリングというやつだ。

 

「この雨は朝までには止むでしょう」

 

 NHKが繰り返しそうのたまっていたのがこの日の明け方五時のことだった。
 はて、午前五時は朝ではないのか。
 などと思いつつ、
 して頼みつつ、
 カッパを着ずに家を出て、結局のところ勤務終了まで降りつづけたのだから、さすがは気象庁である。
 やってくれる。
 かましてくれる。
 作業員の方々ともどもに気象庁を罵りながらの勤務だったのだが、この早上がりの恩恵に免じて、それらをすべてチャラにしてやりました。
 んで、
 そんなこんなの帰り道だもの、
 信号で停車するたびに見上げる雲が、ことのほか素晴らしく。
 もとよりチャラに浮かれてもいて。
 写そう、
 写そうと企みながらも、愛車をこぎ続けていたのだが、とうとう帰宅してしまったのである。
 上空を渡る風がすさまじいらしい。
 刻々と変化していく空の表情についつられて、
「次の信号の空のほうが…。いや次の次の空のほうが…」
 電線越しの天空に繰り広げられる、その怒涛をと。
 欲をかき続けて、ついに撮りそびれてしまったというわけよ。

 

 BONDAGED SKY. 

 
 見惚れたぜ。空。
 ここのところ休日がとれないから、ここぞとばかりにレンタルしていた談志のDVDを堪能して。
 往復三時間の疲れを脱ぎ捨てんがため、一旦仮眠をとりーの、それから活動しようと計画をおっ立てた。
 それじゃあってんで、
 明るいうちからコンビニの安ワインを、ボイルしたブナシメジ&ウインナーでやっつけておいて。
 うとうとっと。
 そう、
 うとうとっとまどろむだけのつもりが、不覚にも熟睡してしまったのであーる。
 そして、
 ついさっき起きたと。
 腹減ったのでガストに行って、いらっしゃいませも言わない、いかにも夜勤らしい無愛想な店員に無愛想なカレーを作ってもらったのだぞと。
 負けずに無愛想にむさぼってきたのだぞと。
 そういうこったよ。
 こんな夜中に飯を食うなんざ、何年振りのことか。
 ふと罪悪感に苛まれかけたが、この先、ケービの夜勤を日勤と兼任するようになれば、いずれそんなことにもなるのかもしれない。
 いや、
 夜勤になろうが、食のリズムは変えないほうがいいのかな。
 時差を越えたプチ海外旅行だと。そんなふうに夜勤をとらえれば、いいのかしら?
 

 明日からはまた本業エロ屋の勤務であーる。






 ☾☀闇生☆☽

 

 深夜の無愛想な店員とがらんとした店内。
 嫌いじゃないんですわ。実は。
 決して、ふてくされてるのとは違うからね。
 それはある意味、不器用というやつで。
 深夜の街を満たすのは、暗黙のうちに共有される孤独だろうし。
 そんなぬくもりだ。
 ほらほら、トム・ウェイツが聴きたくなってくる。