わらべのままの精神で歳を重ねていく人たちが、いて。
して、当然のことながらそんな彼らもまた働くのであり。
不肖闇生がここ数日ケービしている工事現場が、その仕事場の前なのである。
なんといおうか。
実に楽しそうなのだ。
つねに笑みを絶やさないし。
トラックと作業場の往復をする出荷作業も、みんなでおもしろがっている。
食後には、近くの自動販売機に好きな飲み物を買いに行き。
飲み終えると、今度はその容器をゴミ箱に捨てに行く。
それすらも愉しんで。
そのたび闇生のそばを、照れ笑いで走り抜けていく。
ならばついこちらの顔がほころぶのも、やむをえまい。
我に返った。
労働の根本とはそういうことだろうし、そうあろうとするものだろうと。
というのもね、ケービ会社にも営業職というのがあって。
彼らは我々のようにケービ服ではなく普通のスーツ姿である。
言わずもがな主にケービ士たちの仕事をとってくるのが使命なのであるが。
時に、作業の進行具合を確かめたり、不手際があった際にはお詫びに現場に顔を出すこともある。
そんな我社の某営業マン。
実は現場の作業員に不評なのだわ。残念なことに。
彼はいつも苦虫を噛み潰したような表情でうで組みをしている。それでいて、てんてこまいでございますよ、といった風情をまとって発注者に会う。
ついでに誘導中のケービ士たちにそんな先輩ヅラをむき出しにして接触する。
その振る舞いもまた作業員、つまりはお客様に見えているわけで。
その負のオーラたるや、傍で見ていても「やめてもお」と思う。
で案の定、「あいつ、いつもあんな感じなの?」と現場の作業員さんに首を傾げられたのだ。
唐突だが、
闇生には、十歳離れた兄がいる。
彼は、たとえ戯れの腕相撲であったとしても、決して幼い弟に負けてやろうとはしなかった男だ。
だもんで、あたしゃ呪い殺さんばかりの形相で、執拗に再挑戦をしつづけたものだった。
んが、
その、いきんで紅潮した弟の顔を兄は、
「おめえは顔で腕相撲すんのか」
顔相撲か。
そんな顔をしたって腕の力には関係ないだろ、とからかうのがおきまり。
なるほど、そうかもしれない。
といって引き下がるのも癪だから、劣勢の我が腕を顔で、つまりほっぺたで押し返しにかかったのだが、そのままぺしゃりとつぶされて顔が自分の腕の下敷きになってしまったことまでは、どうでもいいじゃないか。
ぎうぎうと顔を押しつぶされつつも「まだ腕は着いてないぞ」とイキがったアホさ加減についても、べつにいい。
忘れてくれ。
ともかくだ、
苦しんだ顔をしたからって、それは遠のくもんじゃない。
どうせなら、つい周囲をほころばせる側でいたいじゃありませんか。
☾☀闇生☆☽