壁の言の葉

unlucky hero your key


 本業のエロDVD屋からの帰り道、
 さあ明日からは週三日間のダブルワークだ。
 テンションを入れ替えてケービ士に変身でございー、とケータイで仕事の確認をした。
 毎回前日にメールで通達が入る仕組みなのであーる。
 んが、
 この度はそのメールが無いと。
 念のため会社のサイトにログインして確認をするも、やっぱり指示が無い。
 微塵も無い。
 天候のせいだろうか。
 工事現場や建築現場というのは、その工事の過程によっては雨風に左右されるらしいから。
 あるいはこの不肖闇生の「週三日だけ」というわがままな希望が災いして、思うように本部が仕事を分配できなかったのか。
 こっちは週三でも、現場は毎日動いているのだしね。
 

 にしても、
 今後はこういうケースもあるのだということを念頭に入れておかんとおとん。
 もとい、
 おかんといかん。
 苦い思いをする。
 とらぬ狸の皮算用よろしく毎月の計画を立てていたのではいかんのだぞと。
 社員ではないのだから、働いたぶんだけの収入なのだし。
 しかもこの度のように、
 やる気やら、
 努力やらではどうにもできないものに左右されるのだから。
 

 ところで、
 友人のひとりもまた、現在ダブルワーク中である。
 彼のバイトはポスティングだ。
 運動不足の解消もかねながら、その仕事ならではの愉しみ方をみつけつつ、日々励んでいるらしい。
 派遣先はその日によって現場が違い、
 時には他県にまで原付で向かわされるというのだから、勤務の前からして骨が折れる仕事なのである。
 そのうえで決められた区画のなかをまんべんなくポスティングして回るのだとか。
 おもしろいのは、その町によってそこに棲む猫の顔が違うということだ。
 おそらくは『人相』ならぬ『猫相』のことに相違ないのだが。
 悪相で気の荒いのばかりがいる町もあれば、おっとりとおとなしいやつばかりの町もあるとか。


 ほおお、
 なるほど。


 言われてみれば、そうかもしれない。
 田舎の漁港にたむろする連中は、食いっぱぐれの心配がないせいか、おしなべてノホホンとしており。
 都心の、
 それも野良猫の糞尿対策に住民が一致団結している地域ならば、ぴりぴりとした警戒心が牙をむく。
 そして、夜ごと密かに虐待を趣向する者が住む町ならば…。


 うん。


 路地裏の猫の風情。
 それこそは他でもない、そこの住人の風情ということだ。
 

 









 想像力次第で、
 職場の眺めというのは、劇的に変わるね。
 天候と違って、こればかりは自分次第でなのであーる。
 さて、
 明日こそは仕事が入りますように、と祈っておこう。
 あのね、
 俺の制服姿はね、
 あれだぜ、
 わりぃけど、惚れるぜ。
 覚悟しとけよ、猫ども。



 ☾☀闇生☆☽