壁の言の葉

unlucky hero your key


 たとえば夫婦や家族の間で互いのケータイをこっそりと見る。
 それがどーしたこーしという、飽くなき議論がある。
 けど、どうやら大方の本音はこうだろうね。
「見られたくはないが、見たい」
 だもんで、されたくないことはしない、という理性を発動させて、見ないとか。
 あるいは、それはそれとして、見ちゃうとか。
 いや、見られてまずいもんがあるなんて許せませんわとか。
 チェックは義務よっとか。
 人間としてどうのとか。
 あるいはそもそも他者に興味がないとか。


 ま、キリが無いわい。


 大概がこれ、当事者どうしの問題で語られてしまうのだな。
 厄介なのが、その当事者どうしがなあなあの場合。
 ずるずるのゆるゆるで、当人は風通しのいい器を気取っているのかもしれんが、そこへ記録された第三者のことまでは考えんと。


 そこがどーにも残念だね。
 

 昔、あることを電話で相談していて。
 なんか先方の気配がおかしいなとは思ったのだが、まああたしゃ熱くなって話していたのだ。
 それがどうやらスピーカーモードというのだろうか。家族全員で聴いているのだと途中でわかって。


 萎えた。


 相手の無神経に。
 手前勝手な「包み隠さず」にひとを巻き込むな。
 これと似たような性分なんでしょうが、他人のバッグなどを覗きたがる輩もいましてね。
 ええ。
 周囲にいませんか。
 ときどき耳にします。
 で、まあ、それもよいとして。
 良くはないが、まあ置いておいて。
 それを鬼の首をとったかのように自慢するのがいるのだな。
 こまったことに。
「こないだあいつのバッグをこっそり覗いたら○○があった」とか、なかったとか。
 したり顔で語ってくれるのだが、なんだろう。異様に気持ちが悪いのだわ。
 語るほどに覗いた自分の品位を下げていくことに気づかないのだろうか。
 他人を貶めようとして、知らずに自らを虐げていることに。
 映画『ハンニバル』じゃないが、嬉々として自分の脳みそを食ってるようなものだ。
 それくらいの仲だというアピールなのか。
 アピールされてんのか。俺ってば。
 はて、なにゆえよ。
 それほどの仲ならそもそも覗かんだろうに。
 不思議ぞ。


 ぞぞぞっ。

 
 なんでも、今度はアポなしで友人宅を訪ね、そのパソコンを覗く予定なのだそうな。
 ほお。
 して、なにごとかを暴くのだそうな。
 ほおお。
 なんだろ。このベタベタ感は。
 そのくせ社会的な人間関係(社交)は嫌ったりしてね。
「近いよぉ」
 と。





 ☾☀闇生☆☽