壁の言の葉

unlucky hero your key

 時給換算で食い扶持を得ているひとたちからすれば、ゴールデンウイークは青いのでしょうなあ。
 勤務する意欲があっても、肝心の勤務先が連休ではねえ。
 ううむ。
 それでいて親元をはなれて自立している人にとっては、なおさらだ。
 職を絶たれてバイトから再出発の人もそうだろうし。


 ううむ。
 幸アレ。


 などと考えながら勤務するここ数日でござった。
 はばかりながらエロDVD屋でござる。
 連休だからなのか問い合わせが多くて。
「広告で見たんだけど」
 そんなのも稀にだが、ある。
 たしかに専門誌に広告を出してはいる。
 んが、
「この写真のやつ、ある?」
 などと電話で問われても、広告は出すたびに取り上げる商品を変えているからわからない。
 ちなみにいつの何という雑誌の広告なのかを伺うと、電話の向こうで発行日を探す間がしばらくあったあとに、
「平成十年…」
 おいおい、と。
 十年以上前のエロ本ですかと。
 となればVHSであるのはいうまでもなく、経営者すら違うわい。
 店名まで違う。
 それは知らなくて当然であるとしてだ。それでいて「写真のやつ」呼ばわりは、さすがに分からない。
 すまぬ。繰り返す。
 分からない。
 存じ上げない。
 けどね、
 思ったよ。
 おそらくは古本屋で購入したらしきその十年前のエロ本の、色褪せた広告ページに載った、ちっぽけなエロビデオの紹介に、なにごとかただならぬ情熱を抱いて、アクティヴになったそのエナジー。
 それだ。
 それなんだ。
 あらゆる不可能を突き抜ける力というのは、嘲笑を屁とも思わずに突き進むドンキホーテのスピリットにある。
 うんにゃ、きっと、ある。









 とかなんとか、
 あなたいま、こいつよっぽど暇だな、とお思いになりましたね。
 しかしまあ、
 なんかの拍子にスイッチの入っちゃったときの、人間のエロへの突進力をなめてはいかんのですよ。



 ☾☀闇生☆☽