同じ失業中の友が、訪れる。
いや、彼はあたしとは違って休業中。もしくは充電中といったほうがいい。
起業のタイミングを計って、不況の波が過ぎるのを虎視眈眈と狙い澄ましている。
そんな憎い奴だ。
かっちょいい。
彼は、それまでの食いつなぎとしての求職だぞと。
だから、明日のおまんまを気にしなくてはならないあたしなんかとは、まるで違うのよ。
おろろん。
で、
発売されたばかりのジェフ・ベックのDVDを見せてくれたのだな。
しびれた。
「イキかけた」
びぃぃぃいんと、足の指まで突っ張った。
なんだろね。あのアームのこなしは。
バンドとしての結束もいい感じなのだ。
でまたベースのタルちゃんが、聴かせんだわ。
あのちいちゃな指の運びだけを観てると、高校生バンドの匂いなのだが。
それがまあ、おっさんもびっくりのメロディアスなソロをかますんだな。
歌うのだ、ベースで。
大人な雰囲気の観客たちが沸く、沸く。
ベックがはしゃぐはしゃぐ。
まるで親バカが集結した参観日である。
注目のクラブトンとの共演も、好対照でよろしいかと。
おかげで、頑としてまるくはならないベックを――、そしてその性分を、強烈なコントラストとして確認できたよ。
むろんクラプトンの、クラプトンぶりにも、唸ったけれど。
とかなんとか、
ベックにしびれつつも、頭の中は求職である。
失業というのは、なんであれ、それまでの自分を否定してかかるのだな。
それはもう、なんとも残酷で。
くそったれ。
つまりは過去をごっそり否定されるから、記憶はすべて苦いものになる。
去年のいまの自分の記事にさえも、自己嫌悪だ。
なにをのんきに。去年の俺。
笑って思い出話に花を咲かせるなんて、いまのあたしにゃあ。もう。
ううむ。
それかできるのは、それなりに積み上げてきたものを現在進行形として肯定されている人たちであって。
ね。
けれどね、
なげるわけにゃ、いかんのだ。
いかんのだよ。
こういう時にこそ、しぶとく、執拗に、小さな希望を持つことである。
おもしろがることである。
しつこい冷笑(ニヒリズム)を追い出すことだ。
ところで、
先日、年齢を理由に、電話であたしを断った会社の店舗に立ち寄る。
近所にその支店があるのでね。
どうみてもうちの店のセール日のほうが忙しいのだが。。。
ぼさっと突っ立って。
あんな店長よりは、あたしの接客のほうが丁寧だと思うのだが。
断られた人のぶんも、気張れよ。おい。
☾☀闇生☆☽
仕事ください。