壁の言の葉

unlucky hero your key


 
 このセリフ。タモリのモノマネでお馴染みだ。
 ああ、なんかタモさんがよく言ってたっぽいぞ。
 というこの、デジャヴさながらの説得力たるや、なかなかなもの。
 けど、
 実際のところ当人がどれほど連発しているのかまでは、まるで興味がないと。
 

 なんにせよだ、
 実生活での使い勝手が実にいいのだわ、この言葉ったら。


 まずは寂しいときのノリツッコミに便利っしょ。
 受信トレイのあまりの寒々しさに、もしや回線はずれてんじゃねーの? と。パソコンの後ろをごそごそやりーの、ここぞとばかりに、
「んなこたぁ、ない(笑)」
 と口ずさむ。
 ことのほかニカっと笑う。
 相手もないのに、これ見よがしにやらかす。
 すれば、とたんに孤独がひしひしと、なおのこと際立つじゃんか、とおもいきや、
「んなこたぁ、ない(笑)」
 ね。
 独りでも使えるし。









 使わないし。




 いやなに、
 なんかね、日常は、日々むき出しの自己主張ばかりが吹き荒れていくばかりで。
 その良し悪しは、ケースバイケースなんだろうけれども。
 そうなると、律儀なまでに謙虚や謙遜を貫いたなけなしの言の葉を、うっかりスルーしてしまいがちでございましょ。
 スルーされ続けた心優しき機微の球は、受け手を見失って自虐へと堕ちていくわけで。
 うっかり見殺しである。
 さあ、そこだ。
 そここそが、タモさんの使いどこなんだ。
「んなこたぁ、ない(笑)」
 すかさずこれで拾ってやろうじゃないのよ。
 タモさんは、謙遜を自虐におとしめないのだな。
 しかもパカッと明るいし。


 パカッとな。

 
 ばかりか、
 はなから自虐として放たれた言葉にも効くのだ。
 自虐を謙遜へと、ころっと昇華させちまうの。
「あたいなんざ、どうせあれよ、チンカスの湯気よっ」
 ときても、決してたじろがず、
「んなこたぁ、ない(笑)」と。
 できればグラサンでエア・マイクを握りたい。




 いや、もう握ろう。
 この際。





 などとつらつら書いてきて、ひょっこり思い出した。
「んなこともあるさ」
 タモさんとは逆だけど。
 これをちょっち青臭く、日活スターっぽく言うのも、まあ、あれだ。
 なんだ。
 人の凹みに、使える。






 ☾☀闇生☆☽


 雪だね。
 明朝はダイヤが乱れんのかな。
 ブログなんか見てないで、さっさと寝ましょう。