壁の言の葉

unlucky hero your key


 いったいこの体のどこに、
 これ以上削り落すことのできる脂肪があるのかと。
 もう、ぎりっぎりよ。
 がりっがり。
 てか、もうすでに試合前のボクサー状態だわ、これは。
 さあ、たいへんだ。
 vsジョー戦前夜の力石くんだ。


 て、
 別にあたしの体のことじゃありやせんの。
 不肖闇生が、
 かたじけなくも任されているエロDVD屋の経営のことであーる。
 ここ一年は特にね、
 上からの「削れ、削れ」の厳命に従ったり、
 ときには抗ったり、
 なんのかんのとやってはきたの。
 むろん経費のことね。


 で、案の定、


 それはさすがに減らしちゃいけない脂肪でしょと。
 そんなのまで、削らされて。
 なんせ売れるものは、補充せずにはおれないのだし。
 すれば必然的に請求もかさむわけで。
 ところがこれが通じないのだな、上には。
 いや、通じたところで、仕方もないのだが。


 それはまるで、アクセルを踏まずに法定速度を順守させられるようなもの。
 悪循環の入口でしょと、説いてはきたのであるが。

 
 なんてったって泣く子も黙るニッパチ(二月、八月)である。
 この景気の谷の、その最初の難関を終えようという今。
 じわじわとしていた景気の下降速度が、急激に高まったのですな。
 過激に、と言おうか。
 そこへきて一月に売れた分の請求が、
 このただでさえ営業日数の少ない二月に届くのだ。
 ずどどーんと、こたえるね。
 しかも、
 この景気では、来月にもちなおすかどうかの、見込みはまるでなく。
 客単価の落ち込みには、目も当てられないわけで。


 なむさん。


 これはいよいよあれかな。
 転職かな。
 ざまはない。
 受け入れてくれるとこがあればいいが。
 そう甘くもない。

 








 てかね、
 バイト君の前で、取り乱してそういう話をしなさんなっ、てえの。
 御大将よ。
 殿(しんがり)戦の現場の志気にかかわるわい。



 ☾☀闇生☆☽


 みんな、
 どうしてんすか。