深夜に押入れをごそごそとひっくり返していたら、古いラジカセを発掘した。
言っとくがラジカセである。いまどき。
その名の通りにラジオ+カセットという、ただそれだけの。
しかもこれ、モノラル仕様で、スピーカーが一個という代物だ。
ブランド名も得体が知れない。
にもかかわらず、サイズはVHSのテープを三本重ねたくらいもある。
ごつい。
おそらくは今なら災害用のラジオだって、ライトや充電器、緊急サイレン、その他もろもろを仕込んでも、手のひらサイズという時代である。
あれは何年前だろう。もう随分と経つが。
小生、いまだに梅干だけは、自家製のを実家から送ってもらっていて。
あるとき、そのダンボールのすき間に、このラジカセが詰め込まれてあったのだ。
すでにあたしゃ安物ながらCDコンポを所持していたし。
というか、時勢はすでにMDだというのに。
そこきてこの堅物が届けられたのだから、困惑してしまった。
なんでも親父が、近所の懇親会だかなんだかのビンゴで当てたとかで。
はて、それは本当に当たりなのかと。
内心、いぶかしんだ闇生ではあったのだが、電話口でそれを得意げに話すおふくろの鼻息にはただただ気圧されるしかなく。あいまいな礼をのべておくに留めたのであった。
引きずり出してみると、原マスミの『夢の四倍』のカセットが入ったまんま。
ということは、一度は再生してみたのだろう、昔の俺。なんやかんや不平を言いながらも。
今聴いても、さすがに音質にはつらいものがある。
けれど、FMをつけてみると、ちょうどビリーホリデーあたりのジャズが流れていた。
原音がモノラルだから、これがびったりはまって心地よいのだな。
ビートルズの擬似ステレオものや、
あるいはモノラル音源をウーハーの効いたふたつのスピーカーで聴く、なんていうのに無粋を感じていたから、これが思わぬ喜びで。
当時にもどってリアルタイムで愉しんでいるような。
ありがたくもそんな至福をゲットした。
で、
聴きながらまどろむうちにいつのまにか眠りこけてしまったのであーる。
そして早朝。
点けっぱなしにしていたそのFM曲の、放送開始のプログラムに起こされた。
吹奏楽部っぽい伴奏で子供たちが歌っている。
どこかの校歌だろうか。
しばらく聴いていると、周波数と局名を告げるアナウンスが入った。
「こちらは○○FM」
なんと隣町ではないか。
ごく限られた小さな地域に根ざすラジオ局が、こんな近くにあったのね。
調べると地元企業の協賛を得て、実に健気にやってんだな。これが。
スパイク・リーの映画『Do The Right Thing』の横丁DJラヴ・ダディみたいだ。
ううむ。
というわけで、我がモノラル・ラジカセ。
この、かっこ悪くて、時代遅れのにくい奴。
しばらくは捨てられそうにないぞと。
おふくろっ、
さては、してやったりだな。
☾☀闇生☆☽