壁の言の葉

unlucky hero your key

 近未来の都市。
 人口の大半がホームレス。
 かく云う闇生もそのひとり。


 真夜中に、車の自爆事故があった。
 大破した車内からみつかったのは、老いたホームレス。
 車は盗難車で、タバコを買うために停車していたのを、持ち主が離れたすきに奪ったとのこと。
 その不可解な逃走経路。
 蛇行運転。
 逆走。
 駅前のロータリーで執拗にスピンを繰り返し、その直後に小学校の校門に突っ込んでいた。
 彼は、ガード下で朽ちていた廃車のワーゲンをねぐらにしていた。
 仲間だった俺たちは、そのねぐらで、ささやかなお別れの会を開いた。
 思い出話をしながらガラクタ同然の遺品をまとめていると、仲間の一人が声を上げる。
 ガソリンタンクから良い匂いがすると。
 中に食い物が溜め込んであるらしい。
 普段は仲間のおこぼれにすがってばかりいた老人だったが、なんのことはない、ちゃっかりしていたのである。
 石油ポンプで吸い上げてみると、その正体はカレー。
 具が定かではないのは、繰り返し煮込みつづけたせいらしい。
 みつけた仲間は、さっそく味見を。
「うんめえ」
 そこに居合わせた全員が腹をすかせていたが、さすがに気味が悪くて、遠慮した。
 ひとりカレーを食い続けていた男。
 まもなく笑い出し、
 歌いだし、
 踊り出して、
 やがて絶叫。
 みんなの制止を振り切って猛然と駆け出した。
 そして、折りよく通りに停まったセダンを奪うや、そのまま視界から去っていった。


 

 ☾☀闇生☆☽


 近所の商店がばんばんつぶれていくなぁ。
 うちもそーとーやばい。