壁の言の葉

unlucky hero your key


 こうも空気が秋めいてくると、お香の香りがなじむんだわ。
 といってもドンキで買った安もんのお香ですけどね。
 焚くのだな。こんな朝は。
 いかんいかん、この季節、気をつけんと人恋しくなって、うっかりメールなんぞ出してしまうぞ。
 いい加減、お荷物になんのはもう警戒せんと。


 通勤途中に、雑貨屋というかジャンク屋があって。
 その軒先には、歩道まではみだす勢いで、みかん箱大のプラスチックケースが並んでいる。
 中をのぞくと、紳士用下着だとか、なぜか各社の何かのリモコンだとか。パッケージを紛失したアダルトDVDなんかが詰め込まれている。
 ほとんど店員の監視の外である。
 てか、店員さん居るの? てなあんばいである。
 そのなかのひとつ。
 ひときわ目を引くのがスケルトンのケース。そこに山と詰まれた黒い箱ではパツキンの全裸レディが微笑んでいて。
 おや?
 と思ってよくみると、お乳のトップが無いではないか。
 なんてことはない。日焼けで色あせしてたからマッパに見えたのだ。ヌーブラ装備である。
 なぁんだ。
 ということは、これはヌーブラのワゴンセール?
 ヌーブラを、もってけドロボーとばかりに放置してあんのか?
 山と積んで、まあ。


 と、驚いてから、半年が経った。
 そして今日、久しぶりにそこを通った。
 夏を終えてもそのワゴン、ただのひとつも減っていないようだった。
 店にとっての、お荷物である。
 あたしゃ思わず心の中でつぶやいたよ。


 がんばれ、ヌーブラ。





 







「おまえもな」



 そんな秋だ。


 ☾☀闇生☆☽