壁の言の葉

unlucky hero your key

Secret World。

EverybodyLovesAHappyEnding.



 おそらくは真夏日だったと思う。
 そこを押して日中にウォーキング。
 久しぶりに土手のコースをとった。
 河川敷の雑木林を抜け、ススキの原をゆく。
 むせかえるような草いきれ
 汗みずくになって。
 初期の北野武映画のなかの沖縄を連想する。
 あの強烈な、生と死のコントラスト。
 i-PodはTears For Fears(TFF)だ。


 数年前にオリジナルメンバーのカート・スミス(Vocal,Bass)がバンドに戻ったの知ってました?
 これは、めでたい。
 あの大ヒット曲Everybody Wants To Rule The Worldのボーカルをとっていたほう。
 脱退間際は相棒のローランド(代表曲Showtの)ばかりが目立ってて。
 アルバムのクレジットでも、存在が薄くなってるなと、思った矢先のことだった。
 バンドの名前はローランドがひとりで引き継いで、新メンバーだったオレッタも脱退。
 カートに無断で脱退を表明されたローランドは、その後、ねばっこい憎悪むきだしの歌詞ばかり書いていたのだ。
 痛々しいたらありゃしないし、ずばりみっともなくもあった。


 仲直りは、カートがローランドの自宅を訪ねてのことだったという。
 うん、めでたい。
 アルバム『Everybody Loves A Happy Ending』は、そんな紆余曲折の果てに生まれたのである。
 お勧めだ。
 ジャケでもわかるとおり、Beatles中期以降へのオマージュに溢れている。
 なんせ、のっけから目覚まし時計が鳴って「Wake Up!」だなんて、ねえ。もろA Day In The Lifeしちゃっているし。
 Come Togetherのドラムパターンをなぞったりと、賑やかなことこのうえなしで。
 でもって楽曲がまた粒ぞろいで。
 すべてが惜しげもなくポップ。
 今回は二人で仲良く折半らしい。
 聴きどころはたくさんあるが、特筆すべきはベースラインが歌っているところかな。
 こういうポール・マッカートニーゆずりのベースを弾く人って、珍しくなったと思いませんか。
 なら、それだけでうれしいじゃあーりませんか。


 はじめのうちはBeatles臭にとまどったあなただって、聴きこむうちに溶けていって、まぎれもないTFFの世界にダイヴしていることでしょう。
 そこがSecret Worldだ♪
 こりゃたまんねーわいと、外盤で最新ライヴDVDを購入。
 けれど、こちらはダメだった。
 あの重厚なオーケストレーションをたった四人かそこらで再現というのは、無理があって。
 すかすか。
 けれど、おまけのアルバム未収録二曲は、決して小さくはない収穫。
 いい曲だ。


 そういや、なかなかアルバムの日本盤が出ませんが、どうしたんでしょう。
 そうこうしているうちニューアルバムが待ち遠しくなってもきて。


 バンドっていうのは力関係が掛け算になるところが面白いですな。
 ローランドのソロプロジェクトと化していたころは、それはそれで良質だし好きなんだけれど、結局のところ彼の身の丈は超えられない。
 けれどバンドには、個人の身の丈を超えさせるマジックが、ときとして起こりますから。
 かといって、おててつないでみんな仲良くやっていれば、いい曲ができるかっていうと、そうでもなく。
 真摯なギスギスが生んだ摩擦熱が、起爆剤になったりするものなのだ。
 それはBeatlesの中期以降にしろ、YMOのBGM以降にしろだ。
 ジャズでもマイルスの喧嘩セッションだとか、名演があるしね。
 たとえばポールがほとんどひとりで録音した曲でも、Beatlesという看板をしょって作った曲は、違う。
 他のメンバーがいないことに、また意味が生まれたりするわけで。
 このブログでもかつて「不在の在」として書いたけれど。


 さて、今後、どう変化を晒していくんでしょうか。
 TFF。
 『Songs From The Big Chair』
 『The Seeds Of Love』
 そしてこの『Everybody Loves〜』は、決して我がi-Podからは外せないのであーる。




 この三枚なしには、今日の一時間半のウォーキングは、なかったぞと。
 おためしあれ。




 ☾☀闇生☆☽