池袋で、みかじめ料拒否で暴行ですって。
こわいですねえ。
さて、みかじめ料って、何か。
すなわちショバ代、もしくは用心棒代のことで。
そこを縄張りとする『怖いおとな団』に、商店が払うものですな。
んなバカな、と。
んなもん、いまだにあんの?
なんて、関係のないひとが聞けば、時代錯誤なシステムに感じるでしょう。
なんのなんの。
この事件は、かのオリンピック主催国からはるばる海を渡ってきたマフィアがやらかしておるわけで。
この手の犯罪も、グローバル化にあやかって、この先益々はびこるのであーる。
実際のところあたしの長年の、
にもかかわらず拙い経験上ではこれ、払ったことがない。
ただし、あたしが受け持った店や、姉妹店のアルバイトが、うっかり払ってしまったことがあった。
怖いおとな団を臭わせた人に、カネをとられてしまったのだ。
その後、連中は決まって行方知れずとなる。
となれば用心棒はつとまらないわけで。
よって、みかじめ料として成立しない。
ようするにそれは詐欺だったと。
相手は、今回の事件のような本物の『団』ではなかったのだろう。
やれやれ。
実は今の店でも要求されたことがある。
ただ「○○組だが」と名乗ってしまったら、それで通報されてアウトだから、連中はあくまで『臭わせる』のみで。
たとえば、
「今月のぶん、遅れてるな」
と。
「店長から聞いてねえか?」
ねえか、と言われたところで、あたしが店長ですから、ひっかかりようも無いのですが。
けれど、
大概の詐欺師は、その辺の会社の事情まで調べていたりするものなのだ。
社長の名前や、問屋の社名まで調べてあげて、それをリズムよく言葉のあいだにチラつかせる。
チラリズムでポリリズム。
そこに信憑性が宿ってしまうわけである。
しかも、決まって新人バイトがひとりで店番をしているときをねらってなんだ。これが。
ったく、いやらしい。
だもんだから、こっちゃ、こまっちゃうんだな。
新人君は勝手がわからないから、パニクっちゃって。言われるままにレジから払ってしまうのである。
で、
この手の詐欺は、手を変え品を変え、繰り返されるもので。
暴対法あたりから『臭わす』のもヤバクなり、
「振込みが遅れてる。今日中に払ってもらわないと、仕入れができなくなるよ」
そんな電話にひっかかた子がいた。
「○○社長には言っておいたんだけど、連絡、聞いてないの? 困ったな」
犯人は、店内の防犯カメラを警戒したらしく、バイトを店のそとに呼び出した。
「○○駅の前で待ってるから」
せっぱつまった雰囲気に、その子も同情して。つい、要求された金額を出してしまった。
こともあろうに、自分の給料袋から。
敵はきっとその給料日をねらっていたのだろうと思う。
無いところから盗るなんて、憎たらしいったらありゃしない。
作業着であらわれて、その道のプロであることを臭わせる手口もある。
雑居ビルの全店舗の集合看板。その電球を換えることになったから。
とか、
屋根の修理を。
とか。
「店長にカネ貸してて」
なんて直球なのもあったぞ。
さて、それへの店側の対策なのだが。
ここぞとばかりのマニュアル化だ。
それも極限までシンプルにしたやつ。
とどのつまりが「確認せよ」。それに尽きるのだ。
自分のあたまで考えよ、とはいうものの、考えてもラチが明かないことが世間には山ほどあるのだ。
この件はまさにそれ。
あれやこれやと自分ひとりで考えず、とにもかくにもまず店長なり社長に電話。
それだけ。
ね。
簡単でしょ。
これを徹底すれば、防げるでしょ。
そのはずでしょ。
んが、
さにあらず。
どれだけ徹底しても、またやられるんだな。これが。
摩訶不思議なのである。
あれだけ言ったのにぃぃぃ、と毎度幹部はげんなりするばかり。
訊くと、電話で本部に確認しようとすると、相手はキレたのだそうな。
てめえ、疑ってんのかと。
それが怖かったと。
んで、
詐欺だとわかっていながら、払ってしまったと。
わかっていながら。
そういうときこそ「バイト」を使えばいいのに。
たまたま電話がどこにもつながらなかったとしても、
「俺、バイトなんでわかんないっす」
と、ちょっとおバカになってみる。
でもってそのおバカを愚直なまでに突き通す。
へらへらっと。
実は、俺もちょいちょいその手を使っていたのであーる。
余談だが。
飛び込みの営業がうるさいと思ったとき、あたしゃよくこの手で逃げる。
作業が立てこんでいるときなどは、めんどくさいのだ。
さすがに「バイト」で通せる見てくれではなくなってしまったが。
「失礼ですが、店長さんですか?」の問いを否定してしまうのだ。
すると、こちらが店のトップでないのをいいことに、営業マンの態度ががらりと変わるのだから、おもしろい。
それで人とナリが知れようというもの。ひいては会社の姿勢がうかがわれようというものだ。
「まずは、丁稚の心をつかめ」
そんな基本も、昨今の営業マンは教わらないのだろうか。
教えないのだろうな、上司も。
評判というものは、下っ端から上へ上へと拡がっていくものなのに。
数字に直結するものばかりを考えていると、結局、その数字はもろい。
安定しない。
クーリングオフの刑じゃっ。
閑話休題。
そのセコイ詐欺師たちのはったりも、本物の『団』の暗躍あってのものだ。
弱きをたすけ、強きをくじく。
仁と侠を通すためなら、法をもおかす。そんな昔かたぎな『おとな団』は、いまやおとぎ話なのであーる。
あ。
『仁』も『侠』も、そもそもはオリンピック主催国の産でした。
☾☀闇生☆☽