壁の言の葉

unlucky hero your key

歩く。23

 甲州道中、第七回。
 お盆休みをつかって連続で敢行してしまった。


 この街道ウォークのテーマの個人的な縛りとして、いかに日帰りですますかというのがある。
 本音を言えば、休みをどーんとまとめてとって、街道近くの民宿から民宿をつたうようにどっぷりと旅をしたい。
 けれどそう大きく構えてしまうと、結局は願望だけで終わってしまう恐れがただならない。
 来年こそは。
 嗚呼、来年こそは、
 と先延ばしにしているうちに、そんな熱意も冷めてしまうに違いないぞと。


 職場の先輩が、週末の休日ごとに前回の続きを進めるという歩き方をしているのを聞いて、その方式で行こうと決めた次第なのであーる。
 有体にいって、パクった。
 今回の盆休みは三連休いただいた。
 なので民宿やホテルを利用しようと思えばできたはずであり。
 しかしながら歩き始めたのがすでに初夏ということもあって、登山シーズンにひとりで泊まれる宿を探すのは無理だろうと。
 かといって諦めたんじゃ何もかわらない。
 思い立ったが吉日。
 そうハラを決めた。
 どうせ三日や四日の連休では踏破できないのだ。
 これからのペースをつかむために、できるとこまでは日帰りで通そうとね。
 むろん、旅を進めるほど中断地点への『交通費』と『時間』がだんだんと嵩んでくるのは明白で。
 これが悩みどころなのだけれど、それを無駄な時間とは考えない。
 おじさんは考えない。
 いいんだいいんだ。
 そもそも『旅』だとか『あえて歩く』というのが、利便性からいえば『無駄』なのである。
 身もふたもないことをあえて言えば「底辺のおっさん自体が無駄」なのだ。
 無駄を楽しむ。それが遊びの大前提だろう。
 よって旅への『通勤』も楽しんじゃえということにした。


 この日も未明に目覚めてしまって、寝付かれない。
 日の出のころに朝食をとって、その満腹感を誘い水よろしく利用して仮眠をとった。
 出発は9時、と予定していたが目ざめが10時である。
 あちゃちゃ。
 あわててアパートを出た甲州道中七回目の朝。


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上野原 新町二丁目。
 

 上野原からその北方を横切る20号まで1㎞はある。
 すでに日差しが強い。
 歩道を行く人はまばらで、たまに見かけても木陰をひろいながら歩いている。
 前回の中断地点、新町二丁目交差点に到着したのが、11時50分。
 さて、再スタートであーる。


 スタートしてすぐに『上野原市消防団』の小屋があって、その脇道をのぞくと立派な大門が見えた。
 脇道というよりは、個人邸に通じる私道だが。
 お邪魔しま~す。


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上野原宿本陣跡。

 
 これが『上野原宿本陣跡』。
 門だけだが、それでも迫力があったねー。
 
 
 街道にもどり、本町歩道橋で20号から離れ、左斜めにのびる枝道の旧道に入る。
 たしか最初の小さな十字路だった。
 その両サイドに石碑がたっている。
 左が『大乗妙典日本廻国供養塔』。

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大乗妙典日本廻国供養塔。
 なんでも、とある僧が日本全国の霊場法華経をおさめて歩く修行を達成した記念だという。
 法華経の数は六十六部。
 原則として一国に一か所。一部ずつらしいが、簡略型もあったりして巡礼のルールはさまざまだったようだ。


 そして右が『木食白道上人加持水井跡碑』。

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木食白道上人加持水井跡碑。
 ながらく井戸のなかったこのあたりに、とある上人さまが加持祈祷して井戸を掘りあててくれたそうな。
 ということは、前者後者ともに文政十年に建立されたというから、井戸伝説のこの地を霊場として前者の僧が法華経をおさめたということなのだろうか。


 引き続き、のどかな道をゆく。


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上野原 馬頭観音


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上野原 道祖神


 Y字路を右にえらぶように道標が立っていた。


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上野原~鶴川 道標。


 これまでとデザインが違うのは、行政テリトリーの違いからか。
 前回までは丸太に『甲州道中』とあったが、こちらは『旧甲州街道』と表示されてある。
 往時は生活用水でもあったろう小川に沿って道はつづく。
 この水路を縁取って並ぶこのオレンジ色のぷにぷにポール、どうすか?
 どうしても付けちゃうんだよなあ。
 安全面からすると仕方ないのだろうけれど、風情はないよね。


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上野原~鶴川 道標2
 

 分岐に道標。
 この上野原宿から鶴川宿のあいだは道標がじつにこまやか。
 あたくし的には、やっぱ前回までの丸太の道標のほうが好きだったな。


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上野原~鶴川 道標3


 『鶴川入口歩道橋』で20号の上空を横断。
 階段をおりたらひきつづき北上。
 そこから道はS字になるが、古道はそのSをショートカット状に貫く。
 イメージとしてはS字に一本足して8にしちゃう感じだろうか。


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上野原~鶴川 道標4 S字カット。

 
 ここから分岐してショートカット。
 すぐにまた道に戻るがこれも横断して、


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上野原~鶴川 道標5 S字カット。


 ここからまたショートカット。
 そしてまた道に接続。


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上野原~鶴川 道標6 S字カット


 ね。
 実にこまかく道標が設置されてあるでしょ。
 

 鶴川を鶴川橋で渡る。
 釣り人が多く見られた。
 よろしいですな、この眺め。
 奥に見えるのが中央道の高架。


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鶴川橋から。

 
 この鶴川を渡ると鶴川宿だ。


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鶴川宿碑。


 石碑は撮らなかった。
 石碑って、あたらしいとなんか萎えてしまいませんか?
 石碑という手段が、その時代の最善の手段だったからこそありがたみがあるというもので。
 なにもLEDできらきらさせろとは言わないが、ううむ。
 


 というわけで、つづく。




 ☾☀闇生★☽