『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』
国立西洋美術館 東京上野にて
さすがにこの日は覚悟して行きましたよ。
桜、日曜、上野。
と条件的には詰んでいますもので。
目当ての西洋美術館は9時半から。
到着した9時の時点ですでに敷地の外周には人の列ができてました。
当日券組である。
で、これを見てまたしても躊躇するのだな。あたしなんかは。
ひとまず素通りしておとなりの科学館を偵察す。
こちらは人体展の絶賛開催中で。
立てられたプラカードには「30分待ち」とある。
常設展のほうはガラガラのようである。
子連れなら常設展で十分だろう。
ならばあたしにだって十分だ。
が、思いなおして引き返す。
プラドと人体展を天秤にかけているあたくしのミーハー度も考えものだろうが。
ベラスケスさんが次にいつ来るかはわからんのだし、常駐現場が再開したら夜勤あがりのねばついた脳みそで果して存分に鑑賞できるのか、はなはだあやしいのだよ。
ええい、ままよと並んだ次第。
企画展 おっさん一枚 1600円也。
スペイン王室お抱えでフェリペ4世に仕えたという宮廷画家ディエゴ・ベラスケス。
その傑作が7点も出品されるというのが、この企画展のウリとのこと。
そうですか。
ベラスケスといえば、代表作はあれでしょう。美術の教科書に遠近法だかなんだかの構図の解説とともにとりあげられていた『ラス・メニーナス』。
なにそれ?
となるお方はWikiってください。
きっと見たことあるから。
集団肖像画とよばれるその画中に、その絵を描いているベラスケス本人も描かれていて、まるで鏡を見ているような不思議な感覚におちいる、あの絵の作者なのであーる。
今回はその『ラス・メニーナス』は来日していない。
んが、企画展のポスターや公式キャラクターにも使われている『王太子バルタサール・カルロス騎馬像』なんか、あたしのような素人目にも、惹きつけられてしまう。
幼い王子が疾駆する馬上でマントをなびかせているあのかっっっちょいい絵。
実際、館内でこの絵に出くわしたときには、その躍動と鮮やかさに驚いたね。
庇護者であるフェリペ4世の狩猟服姿も描いているが、たとえ自分のパトロンであってもハンサムには描かない。
画面も暗いし、誇張や必要以上に美化している感触もない。
またそれを許しているフェリペ4世の器もでかいのだろうけれど。
それと文化的に感心したのは『矮人』とよばれる人たちを描いた絵が複数あること。
彼らもまた宮仕えだという。
階級の外に属する小人や障害者や異形のものたちだったそうで、慰み者とされたが、アウト・カーストのような差別されている風でもない。
王子たちの遊び相手をつとめたり、国王の執事にまでなった矮人もいるからだ。
王妃お気に入りの侍女になった者もいる。
実際、『バリェーカスの少年』と題された矮人の肖像画からは、彼らへの嘲笑や侮蔑は感じられなかった。
といって憐みや同情といった上から目線でもない。
解説によるとこの少年は小人でなおかつ知恵遅れとのことだが、かりにも宮廷画家が手を尽くしてこんな立派な肖像画を残しているくらいである。
軽んじられていたわけがないではないか。
名前もちゃんと残っているし。
『ラス・メニーナス』にもそんな矮人の侍女が描かれており、誇り高い彼女をベラスケスは畏れていたという。
ベラスケスのほかには彼に影響を与えたルーベンスの作品なども展示されていた。
『聖アンナのいる聖家族』
幼いイエスを膝に立たせたマリアの上気した表情。
見惚れます。
うっとりする彼女にうっとりしますな。
先日ブリューゲル展で知ったヤン・ブリューゲルも花の絵を一点披露していた。
あそうか。
こうやって画家の名前と作風を少しずつ覚えていくのだなと。
同時開催が『マーグ画廊と20世紀の画家たち』。
マティス、ブラック、シャガールなど。
あたしゃやっぱシャガール好きだわ。
確信した。
常設展も充実してたー。
新購入と但し書きされた絵が、けっこうあった。
モネが特集されてたし。
彼の絵はあえてメガネ外してピンボケ状態で眺めるのが愉しいのだな。
何年か前にここにも取り上げたハンマースホイの絵もめっけたよ。
『ピアノを弾く妻イーダのいる室内』
白い内装の家。奥の部屋でピアノを弾く奥さんの後ろ姿が、中央にちいさく描かれている。
あいかわらずこいつ『閉じてる』わー、とちょっと可笑しかった。
というわけで、本日も腹いっぱいでした。
ごっつぁんです。
朝から企画展、常設展、すべて見物して退場したのは14時半くらいだったか。
これで1600円よ。
いま映画がいくらで見られるのか知らないけれど。
公園前は、いやもうすげえ人だ。
アメ横からの坂道は駐車場目当ての大渋滞だし。
歩道もぎっしりで、公園の階段あたりは牛歩を強いられるありさま。
大半は動物園かね。ねらいは。
この時間に駐車場まちの渋滞にはまっていては、遊ぶ余裕など残されていないだろうに。
それとも夜桜見物かね。
それはそれでよろしかろうが。
でも車で来たら飲めないよなあ。
桜は待ってはくれないし。
『プラド美術館展』は5/27まで。
www.nmwa.go.jp
☾☀闇生★☽