壁の言の葉

unlucky hero your key

こそっと偽善を。

 積もった雪が明けがたに凍結するまえに、アパートの前の雪かきをしておいた。
 ちりとりで、人がひとり歩ける程度の幅の道をつくって、20メートル先の通りにつなげた。
 仕事がなく、ずっと部屋にいたので、まあ運動がてらということもあるし。
 また、どうせあたしゃ夜勤者なのである。
 日勤で活動する人たちに日の出前の雪かきはつらかろうと。
 そう考えたら、つくった道にこっそりと枝をつくって、ご近所さんたちの玄関をつないでおいてあげようと思い立った。
 いわずもがな、偽善である。
 偽善の当て逃げである。
 朝になってご近所さんたちはこの道をどう感じるのでしょう。
 どうせならもっと太く広く雪かきせえよ、と思うのか。
 それともまだだれも踏み荒らしていない雪肌をみたかったのにー、と嘆くのか。
 

 ひと汗かいたついでに、散歩をする。


 雪だまりに手をつないだカップルの人型があった。
 戸建ての玄関先には、ばいきんまんの雪だるまがあった。
 近所の猫のものとおぼしきうんちがあった。
 戸建て5、6軒が肩を寄せ合う小さな集落では声を掛け合ってそうしたのか、中央の車の転回場から玄関先からすべてきれいに雪かきが済んでいた。
 夜のうちにやったのに違いない。
 無愛想な夜勤番のいるコンビニは、なるほどやはり雪かきなど無頓着だったし。
 駐車場に出入りする車につくられた轍が、山脈を成したままに凍ろうとしていた。
 対照的に、別の愛想のいいコンビニは雪かきに精を出している。
 
 


 ではでは、おやすみなさい。



 ☾☀闇生★☽