あらすじ。
舞台は港町、守加護(すかご)。
葉巻と機関銃の似合うギャング映画さながらの街だ。
事件は、マフィアの下っ端備後(妻夫木聡)がそのボスのオンナ(深津絵里)に手を出してしまったことから始まる。
あえなく発覚しオンナともども消されそうなるが、
「幻の殺し屋デラ冨樫を知っている」
苦しまぎれに口をついたそんな出まかせにボス(西田敏行)が食いついた。
「ならば五日以内にデラを連れてこい」
ボスはデラの長年のファンだという。
連れてくれば無罪放免、オンナとのことは無かったことにしてやると。
むろん備後にはデラとのパイプはない。
それ以前にデラを知らない。
その素顔を知る者すら、ほとんどいない。
ファンを自称するボスでさえ、正体を知らないのだ。
ならば、と備後はそんなデラの神秘性を逆手にとった。
イチかバチか。売れない役者を雇ってデラ冨樫を演じさせようではないかと。
むろん本当の事情は役者には明かせない。
かくして、言いくるめられてデラになりきる無名の役者村田(佐藤浩市)がボスの前に現れる。
マフィアの前ではデラのマネージャーとして、
そして役者村田の前では監督として立ち回る備後。
デラを本物の殺し屋だと信じるマフィアたちと、一切は映画であるとしてなりきる村田とのドタバタが始まった。
以下、ネタバレ。
まず、ギャングが牛耳る架空の街、守加護という設定があって。
街のたたずまいや人々の服装その他の古びた様子からして、住人たちは古い米国映画を和製に翻案したような不思議な時空を生きている。
(むろん監督によるオマージュが濃厚なのだけれど。)
文明の進度として、テレビやテレビゲームやPCやメール、マイケル・ジャクソンや電子マネーを経てきた我々の世界からは距離を置く。
その街で下っ端として生きる備後が、街の外から村田を連れてくる。
村田は映画でスタントなどを務める売れない俳優。
村田のいた世界は、我々の生活する文明に近いように思われた。
守加護の外となか。
ふたつの世界の差異。
闇生には、この境界の設定が最後まで気になってしまった。
ふたつは、不思議の国のアリスのような関係性にはない。
a-haのPV『Take on me』よろしく、ふとした拍子にギャング映画のスクリーンのなかに紛れ込んでしまった、というのではないのだ。
この「地続きである」というところをどう処理するのだろうかと。
作中、守加護をロケ地として訪れている撮影クルーが登場するが、彼らの機材は『現在』を思わせる。
ケータイも出てきたような記憶があるが、どうだったろう。
このあたりの問題、たとえば日光江戸村のような関係性なのかと推理した。
つまり、江戸村を現実であり日常であると信じて生活する住人たちがいて。
それに対する観光客、という関係。
なんにせよ、最後までそのあたりが解決されないで終わってしまった。
地続きの架空、という印象付け。
その効果は、鑑賞後「この現実世界のどこかに、ひょっとしたら彼らが存在しているのではないか」といった余韻にこそある。
反芻して咀嚼すべきうまみはそこだ。
スター・ウォーズでいえば冒頭のアレね。
「むかしむかし、遥か彼方の銀河で……」
どんなに荒唐無稽であっても、この一文で少年は夢に酔えるのよ。
なんかね、そういうわくわく感はここでの架空には無かったなあと。
☾☀闇生★☽