レニー・ハーリン監督作『ザ・クリーナー 消された殺人』DVDにて。
主演はサミュエル・L・ジャクソン。
共演にエド・ハリス。
殺人現場を専門とする清掃業を営む元警官トム。
いつものように要請を受けて清掃をした、とある殺人現場。
飛び散った血糊、肉片をかたずけ、特製の洗剤で跡形もなくぴっかぴかに磨きあげた。
ところが、仕事を終えて担当署に問いあわせるも、そんな注文はしていないという。
再度その物件をおとずれるが家人は、事件はおろか清掃の件すら知らないと。
ただそこの旦那が蒸発していることが明るみになって事件となる。
何者かにハメられ、殺人現場の証拠隠滅をさせられたと知る主人公トム。
事件の真相は。
犯人は。
容疑をかけられ、自力で探れば探るほどに脅かされていく日常。
はたして、犯人は。
そしてその動機は。
以下、感想。
レニー・ハーリンの名前を懐かしくおもって、レンタルした。
健在なのかな、と。
そしてL・ジャクソンとエド・ハリスの共演である。
構造的には、
腐敗する組織のなかでひとり、正義を貫こうと孤軍奮闘するパターンに近いだろうか。
『セルピコ』とか。
ダーティ・ハリーにもあったような。
そう考えると、世間での『いじめ』の構造との類似している。
んが、
それはここでは置く。
観客にこの映画をチョイスさせた決定的なチャームポイントは、まずこの『クリーナー』という職業だ。
つまり、殺害現場専門の清掃業という特殊な業界への知的好奇心である。
これがどう『映画的に』機能するか。
問題はそこね。
冒頭、この仕事の説明から始まるのだが、これにぐいぐい惹きつけられる。
トムの語りで説明されていくその作業が、凄惨な殺人現場の映像とファンキーな音楽と相まってブラックな笑いを誘うのだ。
そしてその語りが、同窓会で旧友たちにかましている営業トークである、というシチュエーションが面白い。
ただ、惜しいのはその黒いユーモアがまったく持続しないこと。
以降はシリアスなサスペンスまっしぐらとなってしまう。
確かにその緊張感も魅力ではあるのだが、せっかくのチャームポイントの特異性が活かしきれていないと感じた。
『並』のサスペンス映画の枠に行儀よくおさまって、それを越えてこないのである。
同窓会のシーンにあった不良と皮肉の匂いが、そのあと消し飛んでしまうのはもったいない。
足を洗った元ギャングが、まっとうな社会には受け入れられず仕方なくやっている職業、という設定の方が活きたのではないだろうか。
そんな奴が警察の腐敗を突くと。
ところで、L・ジャクソンも腹が出て。
エド・ハリスは皴が増えても、きりっと締まってかっこいいね。
☾☀闇生★☽