HP

 もう50(歳)っすよ。


 夜勤。
 都道の交差点。
 規制開始を待つタイミングで、後輩にそう耳元で呟かれた。続けて彼は、


 俺なにやってんだろ……。


 この会社では後輩だが、複数の会社をハシゴしてきている。
 なので芸歴からすればあたしなんかよりはるかに大ベテランさんである。
 検定各種および指導教をも取得し、かつては内勤として働いていたという。
 それが、いまはイチ隊員に過ぎず、ひとりもんだ。
 50歳、というのも四捨五入での勘定になるが、まあ、そう思って仕方のない状況であり、お年頃でしょうな。


 でも、楽しんでいくしかないんですよ。


 首を伸ばし、車列のなかに標識車を探しながら、咄嗟にあたしが返した言葉がこれだった。
 我ながら思ふ。
 芸がねえなあ、と。
 これだからヒトとしてモテねえんだ。
 面白みがない。
 けど、その言葉につきるのだな。
 一緒に楽しんでいきましょう、とは言えない。
 もしうっかり言っちまえばそれこそ無責任。言うべきではない。
 それぞれの人生なのだし。
 仮にこのさき結婚しようが、どうしたって自分はひとりしかいない。
 以下でも以上でもない。
 ひとりとして、せいぜい背中合わせに頷き合える仲が死ぬまでにみつかればラッキーってな感じだろう。


 んが、それはあくまでおまけであって。
 まぐれであって。
 まずは、寝ても覚めてもひとりであることを受け止めるこった。


 人生。それは一人乗りのヒコーキだ。
 編隊を組んだり、並走する仲ができたとしても、生れ落ちたコックピットのなかには自分ひとり。
 それぞれのヒコーキにひとりずつだ。
 ならば、である。
 晴天、雨天、荒天といろいろあるだろうが、すでに離陸はしちまったのである。
 言わずもがな、燃料は有限だ。
 ならばこの先どう飛ぶか。
 そこからの眺めをどう愉しむかじゃないでしょーか。











 そのキャノピーに、せめて花を。





 ☾☀闇生★☽