公園の夜。

 夜勤。
 足立区と埼玉の県境付近にて。


 予報に雨マークはなかったのに、時よりちらちらと霧のような影が街灯に映える夜。
 なんせ現場が遠い。
 通勤の往復に時間がかかり、今週はずっと身体が休まらない。
 休憩は規制車でとりたいが、この現場の特徴で規制が頻繁に変わりつづけるのでそれも落ち着かない。
 仮眠を中断されつつも車内で休む日々だったが、疲れているのは体ではなく心のほうだとこの夜はおのれを見切った次第。
 スマホでFMを聞きながら目の前の公園を散歩す。
 

 まだできて新しいらしく、植栽の風情が遠慮がちであった。
 すかすかだ。
 都心の公園とちがって人がいない。
 雨のせいもあるだろう。
 いくつもある東屋のひとつでホームレスらしき男が丸くなっているばかり。
 敷地は案外と広大だ。
 中心に向かって丘を成しており、頂上には平らなスペースがあってぜんたいに台地状になっている。
 ベンチがあって、空が広く、どこか出来立ての前方後円墳の上にいるような。
 巨大なスペースキーの上にいるような。
 晴れていれば星をあがめてここで祭祀でもとり行われそうな空間なので、しばし古代を夢想す。
 

 週末には、地元のDQNらがここにたむろするのだろうか。
 ダンスや芝居の稽古にはもってこいではないのか。





 ともかく、一人を堪能。




 

 しゃべりすぎ、はしゃぎすぎの局を回避してラジオをはしご。
 


 

 そういえば先週こんなことがあった。
 車線規制の夜勤現場。都心。
 警備は5名。
 終電後、始発前に作業が終了した。
 規制車は2トン。
 そのドライバーも警備員。
 彼のほかに2名が乗れる。
 ドライバーは出勤時に相乗りしてきた2名をそのまま送って帰ることになる。
 そして残りの2名のうちあたしの方は原チャで来ている。
 つまりアシがある。
 アシがないのはもう1人のほう。
 彼のみが始発待ちとなる。


 先方さんは、規制は解除だが1名だけ残ってほしいとのことだった。
 なのでアシ持ちのあたしが立候補した。
 規制車送迎組はそのまま帰宅すればいいし。ドライバーには彼らを送る義務がある。
 作業がそのあとどれくらい時間がかかるのかは不明だったが、何時に終わろうがあたしゃ原チャでスタコラ帰ることができるのだし。
 当然アシ無しの残り1名は始発待ちとはなるが、現場からは解放されるのだ。
 自由なのだっ。
 寒くもなく暑くもない都心の深夜である。
 どこででも暇はつぶせるだろう。
 

 ところがその案に、規制車ドライバーが激昂した。
 始発待ちをひとり残して帰るだなんてできないと。 
 まるで雪山にひとり仲間を取り残して下山する事案のように罵るではないか。
 ひとでなしっ、といったところか。
 

 先方からたのまれた1ポストを5人交代で終了までみればいいと強弁される。
 涙をこらえんばかりの勢いで。
 

 なんだこれ。
 正直、いろんな意味で怖かった。


 これが40過ぎのおっさんの会話かよと。
 引きに引いて、押し切られる形となる。
 その場限りの喧嘩なら狂った方が勝つのである。
 正しさは二の次だ。
 ただし人徳への影響は、そのあとじわじわと時間をかけて作用してくる。


 40を過ぎてなお孤独をたしなめないだなんて。
 あるいはその他人のたしなみを想像できないだなんて、どうなの。
 当人は優しさのつもりであろうが、それは『ひとり』をネガティヴにしか解釈できない思いやりの欠如に過ぎない。
 



 どうせ始発を待つことには変わりがないのだ。
 1ポストを5人でちまちま交代して時間をつぶすよりは、
 少しでもはやく解放してやるのが、やさしさだと思うのだがね。
 始発までの時間は、彼の自由なのだ。
 だれに干渉されるでもない。




 この仕事になって、意外と「つるみたがり」が多いので辟易している。
 あるいは「独り」のあたしの妬みなのでしょうか。これは。






 松本大洋とか、わかんねえんだろうな。こーゆー人たちは。






 ☾☀闇生★☽