読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

トムヤンクンよ。

 

 夜勤の休憩。
 普段は何も食べないようにしているこの闇生だが、この夜は休憩の終わり間際にカップ麺を腹におさめとこうと目論んだ。
 せめてもの寒さしのぎである。
 目に入ったファミマに掛け込んでトムヤンクンヌードルを所望す。
 お湯をそそいだカップを奉げ持ち、いそいそと公園のベンチを目指す。
 と、その道中にふと気が付いた。
 手の中のカップからまるで湯気が立っていないではないか。
 フタをめくってみる。
 湯気が立たない。
 麺が少しもほぐれずに圧し固まったまま、澄んだ湖底に沈んでいる。
 指を入れる。
 人肌。
 熱燗ならそれもいいだろう。
 んが、カップ麺で人肌は無い。
 断じて、無い。
 ファミマに引き返す。
 んが時計を見ると休憩の制限時間が迫っている。
 いまから店員に事情を話して、なんなら文句たれて、交換をせまり、お湯を注いで3分待って、はふはふ食して、スープ飲み干してぷはーっとなって、楊枝をつかってげっぷー、といったゆとりは無い。
 といって、お湯を注ぐまえにポットの表示温度を確かめておかなかった後悔も、あるにはある。
 なにゆえコンビニ風情のサービスを盲目に信じたか。
 あほである。
 しのごの言わず、日なた水に満たされたカップ麺をカウンターに置いた。
 して、
「これ、よかったらどうぞ」
 と踵を返して現場へ。
 夜食なんぞに希望を抱いた自分を憐れんだ。
 たかだかカップ麺なんぞに夢を抱いた自分を、憐れんだ。
 普段は手をのばさないトムヤンクンなんぞにときめいた自分のはしゃぎっぷりを、憐れんだ。





 さよなら、トムヤンクン。
 もし違った形で出会えたなら、きっと愛し合えたことだろう。
 またどこかで。






 追伸。
 コンビニのポット。
 バックルームで沸騰させてから店頭に出すというふうにはできないのだろうか。
 あたしゃてっきりそうしているものと思い込んでいたよ。




 ☾☀闇生☆☽