壁の言の葉

unlucky hero your key


 昨夜はまたしても仕事にあぶれてしまった。
 予定されていた夜勤の中止である。
 早朝からのおのおと朝風呂としゃれこむ。
 日記を書いていた9時過ぎに支社から電話。
 営業のKさんだ。
 欠員が出たので至急出動してくれとのこと。
 この日は夜勤が入っている。
 年下の先輩Aさんがご指名を受けている現場で、某有名アパレル大衆店の店頭ポスター替えである。
 23時59分から、という指定なので時間的な余裕はあった。
 セットしたばかりの飯の炊きあがり時間を昼から夕刻に変更。
 すでに遅刻という状況だ。
 んが、
 そのペナルティは払わなくてもいいという確認をちゃっかりとってから自転車に飛び乗った。 
 M通りをひたすら北上す。
 10時少し前に現着。
 ベテランTさんが先に着いているではないか。
 営業Kの話では警備1名ということだったが、実際は2名だったらしい。
 しかもベテランTさんは誘導もせず、帽子も脱がずに支社と連絡をとっている。
 なにゆえ……。
 先方の監督さんにともかくも詫びると、事情は会社から聞いていたらしく、逆に頭を下げられてしまった。
 作業はすでに終わった、のだとか。
 面目ない。
 会社に問い合わせてくれたベテランTさんの説明によれば、営業Kの配置ミスと判明。
 完全なる配置わすれだという。
 またかよ〜、
 とTさんとアイコンタクトをとるほどに彼のポカ癖は隊員たちのあいだでは有名なのである。
 現着した我々個人には汚点が無いはずだが、事情を知らない職人たちの視線は鋭く、痛い。
 個人邸の歩道側壁面への足場設置。
 ちゃんと配置していれば、なんてことのない小さな工事だが、学校前の通学路のため警備を発注したのにちがいなかったのだ。


 どうせ会社に出なくてはならない日だったので、そのままベテランTさんと一緒に支社へ行く。
 内勤者全員に気の毒がられた。
 しかし結局のところ現着した二人には一日分の手当は出してくれるらしい。
 ポカをした営業Kだけが、暗かった。
 冗談をかましてみたが、反応がなかった。
 シャレが通じる気分ではないようで、ひょっとしたら神経を逆撫でてしまったかもしれない。
 よほどこたえているのだろう。
 でも、そのこたえかたが誤っているから、くり返すのだろう。
 家族持ちである。
 

 頑張れ、パパ。



 ☾☀闇生☆☽