壁の言の葉

unlucky hero your key

 
 またしても温泉で朝風呂をしたくなり、未明からうずうず。
 こらえて自宅のガス風呂を焚く。
 夜遅くに赤いきつねとおにぎりを食べたので、食欲が無い。
 歩いて数十秒のところにセブンができてしまったのである。
 独りもんとして、まずい展開である。
 それでも食のリズムを作りなおさねば、と頭のほうが朝食を欲する。
 堪える。
 このところ読んでいるコンビニで購入した本。哲学入門的なやつを、さかのぼって初めからノートにまとめはじめる。
 中学生向きに体系的なまとめ方をしているので、自分の脳味噌にはありがたい。


 どうせ続かんのだが。


 「帰郷する」というウソをぶっこいて、急に持ちかけられた連休中の仕事を断わっていた。
 それを知る先輩から、冗談半分に「おみやげを」と声を掛けられていた。
 ういっす、と生返事してはおいたのだが。
 連休明けの一発目。今夜の夜勤は彼が譲ってくれた仕事であることを思い出す。
 ネット通販で、故郷の名産などを漁る。
 次にどこで会えるかも定かでないのだから、そこまでするほどのことか。とも思う。
 しかしなあ……。
 と、手頃な金額で日持ちが良く、なおかつわが故郷ならではのものが見つからず、逡巡したがついに決意。
 注文す。


 昼。
 玄米を炊き、納豆とインスタントみそ汁にめかぶを入れていただく。
 かつて現場でいただいたうまい煎餅の支店が近くにもあると知って、自転車で出かける。
 地図でみると至って近いのだが、心臓破りの坂の向こうであることは知っていた。
 煎餅目当てにぜいはあぜいはあと喘ぎつつ、こぐ。
 黒胡椒のきいた、薄焼き煎餅。
 なんかの機会にだれかに分けてやろうと思って多めに買い求めておく。
 喜ぶぞぉ、あいつら。
 そんな機会などないのは、知っていた。
 その以前に「あいつら」て誰なんだか。


 ぜいはあぜいはあ、こぐ。
 おっさんは、こぐのだ。


 夜勤にそなえて寝ようとするが、目が冴えてしまう。
 連休中、このアパートの住人はほとんど外に出なかったようで。
 と決めつけておく。
 誰かが訪ねてきた様子もまったくなく。
 と決めつけておく。
 退去した隣室の片づけは連休が明けてからだろうか。




 ☾☀闇生☆☽