サイモン・ブルック監督作『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』渋谷イメージフォーラムにて
英国の演出家ピーター・ブルックによるワーク・ショップを追ったドキュメンタリー。
想像上の一本のロープを綱渡りする、というシンプルな演技を基点に、イメージの共有を深めていく。
タイトルの通り『お稽古』であるからして、これを映画としてみれば肩すかしを喰らうことでしょう。
有体に言って、眠い。
それは濃く、深く、安定して充実し続けているが故のこのであり。
起承転結やドラマティックな展開は、ここには無いのである。
役者に灰皿を投げつけて激怒することもなく、
自己実現の達成も、それによる歓喜はむろんのこと、
挫折や苦悩も、慰めの抱擁も無い。
目の前の一本のロープをいかに感じ、表現するか。
それを突き詰めることに終始している。
だもんで静かです。
ピーターの演出も、さながら老精神科医の問診のようで、哲学的です。
というと堅苦しく感じるかもしれません。
あたしは『遊び』というひとつの瞑想法であると感じました。
強度の集中力のなかで、リラックスしている。
ここでは『イメージの共有関係』というコミュニケーションの基礎を遊んで(学んで)いるのです。
だから役者だけに意味を持つワーク・ショップではないと、思ってよろしいかと。
違うのはこの『共有関係』を『共犯関係』にまで高めるのを生業としているのが、彼ら役者というものなのだろうと。
野田秀樹の『赤鬼』ロンドン・バージョンでトンビを演じていたマルチェロ・マーニが光ってました。
そして日本人俳優、笈田ヨシ。
なにより、即興でその場に音楽をつけていく土取利行の佇まいが素晴らしい。
初稿で誤って『お稽古』を『授業』と記していました。
完全なるあたしの記憶ちがいです。
☾☀闇生☆☽