壁の言の葉

unlucky hero your key

 連載再開された『HUNTER×HUNTER』のためだけに、未明のコンビニへ。
 前話掲載分以来に、少年ジャンプを買う。
 もうね、腐れ縁ですよ。
 長期休載がどんだけ続こうが、
 待つしかねーんだもの。
 絵があれようが、
 それを巷で罵られようが、
 描いてくれりゃ御の字なのである。
 物語ってくれれば、いいのである。
 作者の「驚かせ好きっぷり」が攻撃的な角度で決まっててさえくれれば。
 ざまみろとばかりに舌を出しててくれれば。



 それはともかく今朝、三時五十分。
 近所のセブンイレブンでは、まだ『少年ジャンプ』を陳列していなかった。
 それを待つのもおっさんとしてどうかと思われ、
 カップめんだけ買ってひとつ先のファミマへ移動した次第である。
 するとここではちゃんと陳列されてあるではないの。
 恐らくバイトの子ができる子なのだろう。
 ちょうど三、四冊だけを「立ち読み防止のヒモ」で縛って陳列用として出したタイミングだったらしく、
 あとの在庫はカウンターの中に積んであって、一番上のが縛りかけになっていた。
 これなら発売日に最速で販売ができるよね。
 客が陳列用のをレジに持ってきたら、縛って無い在庫のを売ればいいし。
 売るたびにヒモを解く手間もいらないと。
 陳列用のは、売るたびにまた陳列棚にもどすだけでよく。
 もしも店頭にも高々と積みたければ、暇を見て在庫のを適当な数だけ縛っていけばよいのである。
 なにも最初っから全部を縛る必要はないのだ。
 その手間のために陳列時間を遅らせるのも考えものではないか。


 復路にまたセブンイレブンの前を通り過ぎる。
 陳列棚にあけておいたスペースあたりに、ジャンプ新刊を並べて行く店員の姿が見えた。
 売り場にふたりもいたはずだが、もうひとりがバックルームで「縛り」作業をしていたのだろうか。
 そこいくとファミマの彼はひとりでやりくりして、あの迅速さだ。


 エロDVD屋に勤めていたことを思い出す。
 あたしが入社するまでは、ポスレジへの商品登録は発売日に、到着した実物商品をたよりにやっていたっけ。
 それを発注の段階で登録してしまうというごく当たり前のやり方に、あたしが直した。
 連中は面倒くさがったが、一度に数百本が届くのである。
 レジをこなしながらカウンターに新作を積んで登録していく方が煩わしいではないか。
 客がくるたびに登録画面から販売画面に切り替える、あの無駄な間ほど焦れるものもなかった。
 なに、この間。みたいな。
 何待ち? みたいな。
 だいいち客はそのカウンターに積まれた商品が気になって仕方がないはずだし、陳列されるまでそしらぬ顔で待っている方々も少なくないのだ。
 常連だけは「何が入荷ったの?」なんて気さくに声を掛けてくれるが、大概はむっつりすけべをかますものであーる。
 むっつりあってこそ、エロ屋なのだ。
 ならば先にデータ入力を済ませおくだけで、彼らむっつりを救えはしまいかと。
 発売日、届き次第に値札を貼ってすぐ陳列できやしないかと。
 発注した時点で入荷タイトルは決まったのだから、その発注書をもとにデータ入力していけばいいわけで。
 急ぐ必要も無く。
 客の少ない時間にこつこつと、少しずつこなしていけばいいわけで。



 店員も楽。
 客も楽。




 そのためには、ちょっとした工夫がいる。
 そんなちょっとがあつまって日々の快適を構成している。
 そのちょっとが、でかいんだ。これが。



 ☾☀闇生☆☽