とある施設の敷地内での建て替え工事。
 その施設には初老の常駐ガードマンがいて。
 ゲートに設置されたガードマンボックスに常時控えて、出入りの車をチェックしている。
 一方、工事についた我々ガードマンは、常駐の彼らとは別会社であり、別契約だ。
 工事車両の出庫は、その常駐ガードマンが見張る緊急車両用通路を通さなければならないという状況なのだが。
 むろん前もって施設側には許可を得ており、
 条件として、車両の前後にガードマンをつけてゲートを出るまで最徐行で誘導することとなっていた。
 それは緊急車両とかち合わないためでもあり、
 歩行者との接触を避ける安全対策としてのことでもある。
 あたしたちは200メートル近く車両を先導して走るのである。
 そして、その条件通りに誘導をしていたのであるが、ある日クレームがついた。
 他でもない常駐ガードマンからである。
 工事車両の出入りについて、聞かされていないという。
 前日までのガードマンとは違う人であった。
 施設からは許可を得ている旨伝えると、それでも「聞いていない」との一点張り。 
 工事責任者から施設の責任者へと許可は申請され、それが通っているのにである。
 上に確かめてくれ、とお願いしても「聞いていない」
 その話が現場のガードマンに下りてきていないといったところで、我々にどうこうできるものではないだろうに。
 それは、常駐の彼が、『上』に申し立てをするべきことではないのか。
 しかし彼が云うには「何時何分、何トン車、何台、という文書で、前日までに提出せよ」とのことだった。
 理屈はわかる。
 そして理想もそうだ。
 しかし、円滑で、状況の変化に柔軟に対応した工事の流れを考えれば、それは難しく。
 積み込みや積み下ろしに時間がかかった場合は、その都度、訂正文書を申請しろというのだろうか。
 搬入、入庫ならいざしらず、搬出、出庫の時間を厳密に決めるのは無理である。
 だからこそ、ガードマンが前後について、いちいち誘導させるのではないのか。
 しかも、彼ら常駐ガードマンがそのスケジュールを知ったところで、あるいは知らなかったところで、何ら問題はないはずなのである。
 誘導を手伝えと頼んでもいない。
 見てなくてもいい。
 彼の任務には関係がないのだから。
 ましてや、彼にとってのお客様である施設側がこの条件で『O.K.』を出しているのである。
 彼のこねた『常識的な駄々』のせいで、彼の『上』もまた、毎日書類をチェックし、タイムスケジュールを作成し、常駐ガードマンに渡さなくてはならなくなる。
 繰り返すが、この頑固で偏屈な駄々は、彼だけがこねている。
 他の曜日の担当とは、なにひとつ摩擦が起きていない。

 

 これもまた『プライド』なのでしょーか。



 彼はいったい何をガードしているのやら。
 彼が扱う関係者、および緊急車両への誘導をみるに、横柄なことこの上ないわけで。
 カモンっ、てなもんである。
 何さまかと。
 ゲートにて何かしらの権限を託されてはいるのは事実だろう。けれど、それは権限をお借りしているに過ぎないのだ。
 乱暴なことを言わせてもらえば、出入りの関係者全員が使えるゲートキ―でも出来たなら、要らない係である。
 あくまでキーであって、キー自体に権限は無い。




 ともかく、施設の人によると、もともと近々に常駐ガードマン会社を変える予定であったとのこと。
 お客様感覚を喪失させると、ああなっちゃうんだ。
 健気な頑なさも、目的をはき違えると、頑固なだけ。
 意固地なだけになる。



 ☾☀闇生☆☽