自分以外のすべてが敵である。
 という妄想の中に生きている。
 と思われる女の人に遭遇した。
 満員の帰宅電車のなか。
 帽子のつばを折り曲げて顔を完全に隠し、
 前方に開けたわずかな隙間から周囲をのぞいては、
 悪態をついている。
 

 わたしが来ると途端にみんなもそもそとケータイを出し始めるんだ。カメラでわたしを撮ろうたって、そうはいくかっ。ここは優先席だぞ。ケータイの電源は切ってください。音楽のも同じだっ。おカネが欲しかったら、ちゃんと働いて稼げばいいんだ。そんな盗撮で稼がなくたって。盗撮の大好きな変態さんたち。ALS●Kのみなさん、御苦労さま。盗撮、御苦労さま。


 この手の孤独というものは、
 ただただやり過ごすしかない。
 からまれていた若いサラリーマンも、強いられるままに音楽プレイヤーを切って、あきらめた。
 きっと、ひとりで家にいるときも、心の休まる時はないのだろう。
 寝ても覚めても夢の中でも、見えない敵とあくなき抗争をつづけているのだろう。
 かつて知り合いがドラッグにやられて被害妄想の地獄へと堕ちたとき、それを感じた。
 睡眠不足のやつれきった顔で、たのむからお前だけは裏切らないでくれと、泣きつかれたものだ。
 目の下のクマは怪しまれるからと、そのカモフラージュとして、顔じゅうに赤い蛍光ペンを塗ったくっていたっけ。
 だから余計に周囲の注意を引く。
 それが被害妄想に輪をかける。
 みんなが俺をマークしている、と。
 生活するマンションじゅうが自分を監視・盗聴しているといって、時折、その見えないマイクに向かって声を張り上げていた。曰く、




 やれるもんなら、やってみろっ。




 週のはじめ。
 一日の終わりにそんな孤独に出くわした闇生であった。
 更けていく夜のなかでひとり、James Blakeを聴く。
 こっちの孤独と、
 あっちの孤独。
 はて、
 どっちがしあわせなのだろう。








 

 

 不覚にもラジオから流れたとき、
 アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズの新作?
 と錯覚した。
 声はまるで違うのに。
 トレードマークのちりめんビブラートをやめたのか? とまで。
 そんなこんなでアントニー・ハガティを連想す。
 このオケでデュエットしてほしい。







 孤独?
 いやいや、孤立のまちがいだな。



 ☾☀闇生☆☽


 重低音のSE的ベースが、アクセントとしていい。
 ヘッドホンでないと聞えないかな?