壁の言の葉

unlucky hero your key

 六時にアパートを出て、
 えっちらおっちらと河沿いのサイクリングコースを自転車で。
 爽快な気分に浸りつつ、
 昨夜のゆーすとでの細野さんのライヴを反芻。
 気が付けば『悲しみのラッキースター』は、あたしの定番鼻歌となっているのだった。
 我が愛用の世代遅れのi-podは、遺憾ながらちっとも目覚めなくなってしまったのだが。
 おそらくは永久の眠りについたのに違いない。
 となると、
 

 NO MUSIC,NO LIFE.
 ならぬところの、
 NO MUSIC LIFE.


 でもあるわけなのだが、
 といって決して悲観せず、
 なんならこれを機に、耳をリセットすべきではと。
 年がら年中音楽漬けはかえってよくないだろうと、ふまえてはいたのだが。
 それはホントにそう思うのだが、
 それでも、記憶のなかから何かしら選曲されて、音は鳴るのだな。


 ねえ、いままでどこにいたの?


 のこの「ねえ」が良いのだよ。
 とひとりほくそ笑んでいて、ふと気付いてしまった。
 あらま、
 方向が違うぞ。
 ぞぞぞ。
 本日の現場はたしか上流方面で。
 いま向かっているのは、下流方面。
 

 やっちまった。


 とあわてて引き返す。
 痛恨の天然だ。
 生来の方向音痴が、また出てしまった。
 方角や距離ではなく、あたしの場合、景色で地理を記憶するために、川辺のルートは誤りやすい。
 なんせ、漕いでも漕いでも青々とした土手だもんで。
 けど、
 大丈夫。
 そんな自分を踏まえて、いつも大幅に早出しているのであーる。
 んなわけで、
 遅刻はせずに、無事に現場へ到着。
 やれやれ。
 しかも、この日は個人邸新築の基礎工事にともなう生コン搬入である。
 ラッキー♪
 十時に終了だぜ。
 あまぞんに注文しといた『文庫本入れと庫』をローソンに受けとりにいって。
 んで、
 DVDでも観ようか。
 相変わらず無休で働いてるから、こういう棚ボタ現場は、助かるわあ。
 
 


 だらだらしよっと。


 ☾☀闇生☆☽
 

 余談の余談。
 よく会話で、
「そんなの有名だよ」
 とか、
「みんな言ってるよ」
 という具合に、自分の意見の後ろ盾に実態のあいまいな多数派をくっつける癖の人、いませんか?
 あれは、無いわ。
 うん、無い。
 それもまた民主主義ってか。
 ジャンゴ・ラインハルトの左手の指が三本しか動かないなんてとは、有名だよ。
 そうですか。
 あたしも知ってはいたけど「有名」なんてつけんな。恥ずかしい。
 ためしにかーちゃんに訊いてみたが、ジャンゴはおろか、ジプシースイングも、ジャズすらも知らんかったよ。
 職場でも通じる奴なんかひとりもいないね。
 なんなんだ。有名ってのは。