節電と自粛ムードのなか、連日、街の夜は暗い。
派手な電飾看板と店内照明を慎むところが多く、一見開いているのか閉まっているのか分かりにくい店舗が多い。
コトは有事なのだから、致し方ない。
それは構わない。
ただ、
人びとが自粛ムードだの、被災地への同情に引きずられ過ぎるのはどうかと思う。
例の『不謹慎』ブームのことである。
パチンコ屋が叩かれている。
電飾看板が、その目の敵にされている。
パチンコをたしなむ同僚に聞けば、
看板の電飾を落とし、
店内照明も暗くして、
客には整理券を配って入場制限をし、
順番が来れば暗い店内を誘導されてその番号の台につく。
その一角だけ明りがついていて、そこで粛々と玉を打つのだそうだ。
ならばいっそ今は閉店してしまえという声さえある。
不謹慎だと。
娯楽産業にとってこの言葉がなによりつらいのだ。
なんせあたしはエロDVD屋なのであーる。
不謹慎を生業としている。
恥ずかしながら、それで食べている。
その収入から、わずかばかりだがこのたびの義援金を捻出したりする。
先日、某AV女優さんのブログが、いわゆる炎上という目に会った。
彼女にとっての、こんな状況でも自分にできるささやかなこと。その第一が、日々の仕事を普段通りにこなしていくことである。
それで収入を得、
むろん需要に支えられてのことだから、それを支持するファンがあり。という具合である。
撮影のない日は、町から町へとイベントの旅に出る。
だもんで、被災地にも多くのファンがあったはずであり、
その商品を置いていた店舗も少なくなかったわけであり。
顔なじみの店長さんやスタッフ、常連の顔も脳裏にはあることだろう。
それらを呑みこんだうえで、いつものようにイベントの告知をした。
こんなときに『不謹慎』だ。
あっという間だった。
「こんなときに」AV女優のブログをチェックしている自分の不謹慎は、どこへやら。
繰り返すが我々は不謹慎や、不貞や、不倫や、不徳というところで食べている。
すまん。
言いたくないが、それもまた社会の一側面なのである。
多面体である人間という生き物の一面でもある。
硬直した全体主義下では肯定されにくいのだろうが、残念ながらそれを許容するお国柄に拠って立っている。
それもまた日本だ。
すまん。
不謹慎ですまん。
そんなこんなで、自粛されてイベントが流れたりする。
商売あがったりである。
断わっておくが遊びでやっているのではないのだ。
いや遊び心には違いないが、
断じてアハハオホホではないし、
ましてや道端でやろうってんじゃない。
専用のスペースを借りきって、
腕利きの縛師やプロが参集して、双方同意のもとにおっぱじめる、ようするにお仕事なの。
それも、お金を頂いた興業なのである。
たとえばプロレス。という娯楽。
格闘のプロが、
いわば暴力ショーのプロが、
リングというそれ専用の場所で興業を開いているが、こんなときに不謹慎なとは言われない。
双方同意のもととはいえ、
こんな有事に半殺しを見世物にしてるんだぞ。
なのに、叩かれない。
ばかりか勝利した選手が、リングの上からマイクパフォーマンスで被災地への思いを叫べば賞讃さえされる。
同じことではないのか。
どうなんだ。
本編中に地震のシーンが続く野田の芝居『南へ』。
こちらは開演前に作者が説明をつけ、そのうえで上演を続けているという。
おっし。
こんなときに芝居なんぞ、なんて声ほど役に立たないものはない。
お笑いもつらいだろうな。
このままでは娯楽にかかわる小売店は大打撃を喰らう。
メーカーも、卸し先を失うから連鎖する。
そんな一週間だ。この先きっと自粛難民が出る。
言っとくが、あたしたちゃ有給もなければボーナスもない。
一週間も経済活動を停止させられちゃかなわない。
自助すらおぼつかないのであれば、救済なんかできっこない。
断わっておくけど、節電や節約を拒んでるんじゃないのね。
故意に被災者に対する不謹慎をやらかそうというのでもないのね。
てか応援してる。
当然だろ。
たのむよ。
☾☀闇生☆☽