クリスマス、
 みなさんおつかれした。


 これにて今年のクリスマス商戦、やれやれである。


 本業のエロ屋では日がな一日ゆうせんを掛けっぱなし。
 だもんで、この数日は案の定クリスマスソング大特集といった趣でございまして。
 さまざまなジャンルのアーティストたちが古今東西のクリスマスにまつわる有名曲を、それぞれの解釈でカバーしておって。そいつがこれでもか、これでもかと。
 それはそれで賑やかであったというわけ。


 でもなあ、
 いい加減、食傷といったところかな。
 なんせ、だいたいが決まっているのである。
 定番中の定番といってもいいくらいな選曲でね。
 それが一日中ひっきりなしなんだもの。
 まずワムのあれでござんしょ。
 マライアのビーチボーイズ風のあれでしょ。
 んでもってポール・マッカートニーのあれ。
 とくれば、やっぱジョンのHappy Xmas(War is over)になるわけよ。どうしたってさ。
 うん。
 で、これのカヴァーが意外と多いのに驚いたのだな。このたびは。
 むろん、
 そのどれもが幸福感いっぱいのはしゃぎっぷりではあるのだが。
 中でもロック・アレンジされたのに、闇生はちょいと気を引かれた。
 まあ、
 いちいちアーティスト名を検索するまでもないほど、その演奏は凡庸だ。
 なので、そのまま聴き流しつつ作業を進めていたのだが、終盤になって突如として声が加工されるのである。


 War Is Over.
 If You Want It.


 急速に回転をおとしたように声が低音に転じるのだ。
 いやまったくそれが恐ろしいったらないの。
 当人たちがどれほど意図したのか知らないが、たったそれだけで不吉でブラックな響きになり、辺りは俄かにかき曇り、こちらの連想を強烈に喚起してやまない。


 戦争を終えるのは、君次第なのだよ。


 たとえばそれは、
 圧倒的軍事力を背景にした降伏勧告に。
 有体に言えば恫喝に、転じる。
 と同時に、
 とりわけこの「You」に、注目してしまうことになる。
 「We」ではないのね。
 「You」なのね、あくまで。
 僕ら次第、ではないと。
 お前次第。
 有史以来、世界で最も戦争をし、今もそれを継続している国アメリカの市民権を得たジョンが、それを言うのだ。
 といっても生来の皮肉屋でもある彼のこと。
 「You」は当時の政府なり、大統領なりへの直球なのかもしれないし。
 あるいは、民主主義のお手本国家として、つまりが選挙権を持つ同胞たちにたいしての「You」なのかもしれない。
 いや、そうに違いない。
 けれど立場やシチュエーションが変われば、曲は本来意図するところからやすやすと抜け出して、その意味を変える。
 とどのつまり、化ける。


 反射的にあたまに浮かんだのは王★欣太が三国志を描いた『蒼天航路』だった。
 官渡の戦い、だったか。
 違ったか。
 圧倒的武力、動員力、国力を背景に覇道をゆく袁紹軍。
 それは強さと、揺るぎのない豊かさを象徴するかのようにまん丸に肥満し切った袁紹その人を押し頂いての、勝利の行軍であり。
 いや、幸福そのものの行軍といっていい。
 大地には音楽が鳴り響き、
 軍靴は轟き、
 大気には歌が、踊りが、笑顔が満ちて、
 やがて敵対する小城を埋めるように取り囲む。
 背景にはいたるところに『♪』が描きこまれていたが、
 ひょっとしたら、あそこで流れていたのはHappy Xmasのような曲だったのかもしれない。


 War Is Over.
 If You Want It.






 平和な日常など、実のところ具体化してみれば、それぞれが背負った歴史や文化によって違うものだ。
 歴史や文化を破壊することでしか、統一された概念などもてようはずもない。
 なので手前勝手な平和観を、運動化してよそへ強いるとき戦争となる。
 やはり、
 平和と戦争とは、決して対の概念ではないらしい。


 ☾☀闇生☆☽