ふと我に返るように、
振り返るともなく振り返ることがある。
ひと昔前を。
たとえばテレビを観ていて。
特にCMがそそのかしてくる
「これぞ今」
的風潮や、その変化にである。
いったいいつ頃からだったろうか。
貸金のCMが、堂々と放映されはじめたのは。
レオタードの女が、三人。
ことさら胸を強調して躍るアレが流れ始めたのが、二十年ほど前か。
それでも深夜帯に限ってのチープなシロモノで。
洋楽めかした音楽と、レオタードでもってお色気やらかしておきながら、なんのことはない有体はただの貸金じゃねーかというそのギャップが、当時は受けた。
ある意味、痛快なブラックジョークのようだったのだ。
\SHOPだとか言い方を変えたところで、貸金は貸金にほかならないわけであり。
しかしウケたおかげで羽振りが良くなったのか、CMがグレードアップする。
ジョークがマジになる。
踊る女の数を増やし、
その選考の容姿的ハードルを上げ、
胸の強調はやめた。
同時にブームとなって放映時間帯がぐっと浅くなった、と記憶する。
その後、
業界は各社CMでおねーさんの綺麗具合を、
その健康的イメージを、競う。
なんだ? 綺麗具合って。
またたく間にイメージが一新して、
むじんくんだとかの自動契約機の出現で、より一層借金がお手軽になり。
今では人気タレントを看板にして、
きちんと返すのがマナーであると、貸し手が利用者に公共の電波でもって道徳を執拗に恫喝する。
もとい、啓蒙する時代だ。
こわあ。
酒のCMも変わった。
むろん昔もCMはあったが、
それを流す時間帯にもはや節操がない。
ばかりか、
やけに昼酒奨励のイメージが増えた。
ゴルフ場のような草原で真昼間から乾杯しているのだとか。
ビールだか発泡酒だかのボトルがコンパクトになって持ち歩きやすくなったといって。それをアピールする宣伝は、女性がケツポケットに缶ビールを突っ込んで街を闊歩するというもの。
思うに、
ただのアル中じゃねーか。
パチンコのCMもここ数年で異様なまでに増えている。
というか、
かつてはそんなに無かったっしょ。
ギャンブルのCMなんてさ。
競馬ぐらい?
どこか大人という異界の産物だったはずのそれが、どうだろう。
人気アニメやら、
ドラマやら、
歌手やらがこぞって使われて。
でもってやはり繁盛するのだろう。
して長いものには巻かれろなのか、
パチンコ適齢期の触手をくすぐる企画はあらかた出尽くした感があるほど。
あたくし的にはどーも違和感がぬぐえないのだなー。
たとえば、エヴァとギャンブルという組み合わせが。
そのうちジブリも参入するのだろうか。
パチンコとなりのトトロとかやっちまうんだろうか。
ドラムが回転し、
リーチとともにテーマ曲が流れて、
「おねがい。メイのところに通して」
つってスロットにトトロの大中小が揃うと、
「夢だけど、夢じゃなかった!」
対して、
ぐっと減ったのが煙草のCMだ。
長い間、それは男前俳優のCMの定番であった。
それがあれよあれよと激減して。
少し前までならば、喫煙マナーを訴えつつほそぼそとやってはいたのだが、今ではどうよ。
ちょっと思い浮べることができないくらい。
そして電車の車内で目立っているのは今、過払い金返還に関するものばかり。
こうして見ると、
貸金と、過払い金対策。
昼酒。
ギャンブル。
となるわけで、否応も無く痛感するほかなくなってしまうわけね、あたしなんかは。
不況を。
というか、この国の何ごとかの貧しさをさ。
☾☀闇生☆☽
エロ屋風情が国を語りやがった。