壁の言の葉

unlucky hero your key


 だいぶ曲がるようになってきた。
 しっかし片足が曲がらないというたったそれだけなのに、生活ってのは様変わりするね。
 社会が冷たく後ずさりしやがんの。
 階段降りるのなんてね、ひたすらに恐怖よ。
 ついつい自由の利く脚の方から降りようするのだが、反対の足が曲がらないから、着地できないのだ。


 わかる?


 下手するとそのまま飛び込みそうになる。
 こらえても二三段下に着地か。
 それはさすがに危ないのでおっとっと、と。
 踏みとどまって地道に半歩ずつ降りる。
 電車でも椅子に座れば自然足を投げ出す格好だから、態度悪いし。
 病院の待合室でも、そんな年甲斐もないことになっていたのだし。
 投げ出した脚と、その前の席とのせまい隙間を人が通るのね。
 お年寄りとかがさ、
 わざわざ。
 ほかが空いてるのによ。
 もお、病院なんだからわかってよ、と思うのだが仕方ない。
 コケたあたしが悪いのさ。
 そのたび腰を上げてさ、
 我がが足を改札機よろしくスイングしてお通しするわけ。

 
 終始かばうから逆の足はすでに筋肉痛である。
 腰も、悲鳴をあげておる。
 まあ、
 この度の経験は老後のシミュレーションということで。



 ☾☀闇生☆☽