壁の言の葉

unlucky hero your key


 ここ数日のケービのバイトで、ぐったりだ。
 通勤の往復二時間の自転車こぎは、落語なんぞ聴きながらそれなりに愉しんではいたつもりだったが、三日目に三時間半の通勤が入り、四日目になってどっと疲れが出て。
 腰から下は筋肉痛。
 腿はぱんぱんで正座ができない。
 して腕もやられてる。
 が、肉体的な疲れなんざ、気で逸らす手段を蓄積してきているので、どうにかなるさ。
 問題はその『気』だ。
 気の疲れは、気で逸らしにくいもので。
 なんせ現場の規模がでかかった。
 巨大な団地で、工事が広範囲に散っており。
 我らケービチームも散らばってしまって連携がとれず。
 現場二日目にしてまさかの職長をやるはめになったが、ショッピングモールがからんでいるので全体を見回るスキもない人通りだ。
 よってそれにかかわる職人さんチームも複数の会社が入り。
 また監督側チームも複数の社と人が入り乱れていて。
 命令系統が明確でない。
 これがかなりのネック。
 それなりの事前ミーティングや朝礼でもってその穴を補っているつもりなのだろう。
 んが、
 なんでもこの規模の工事になれていない社がトップを任されているらしく。
 それはいいとしても、
 ケービとして、やはり重ねがさねに思うのは、意思の疎通の足りなさだ。
 職人さんたちは自分たちの暗黙の了解のなかで勝手に動き出す。
 ミーティングに付き合ったところで、ケービは日ごとにメンバーが違うわけで、それまでの工事の流れや地理的な状況の把握、加えて専門用語についていけない。
 なにも難しいことを言ってるんじゃない。
 事前ミーティングとは別に、実際の現場で意思の疎通をしてくれっつーことだ。
 今からメッシュシートを下すから、歩行者が来たら声かけて止めてね、とか。
 今からピロティの上の足場をやるから、歩行者は完全通行止めね、とか。
 白い10t車が2台、もうすぐ来るから、したらそこの街道で待たせて片交にして見てて、とか。
 それっぽっちの伝達をケチって、唐突に動き始めるのだからたまらない。
 工事の範囲が小さければそれでもフォローできるだろうがねえ。
 走り回ってたよ。あたしは。


 ダブルワークだもんで、週の残り半分はこの現場にでられないと。
 そう告げると露骨にがっかりされたのは、少しだけ嬉しかったかもね。
 でないと消費された頑張りが、浮かばれないっす。



 

 ☾☀闇生☆☽


 へろへろよ。
 へろへろ。