いい気持ちだったぜい。
 イエス、銭湯。
 いったい何年振りだろうか。
 家を出て最初に住んだ四畳半、風呂なしトイレ共同の木造モルタルアパート時代以来ではないのかな。
 あのころ使っていた銭湯はすでに無く。
 その近所にあった古い都営アパートが、確か風呂なしで。
 それと某銀行の社員寮もまたそうで。
 都営アパートは取り壊され。
 社員寮が風呂付きになってからというもの、その界隈の銭湯は軒並みつぶされた。
 加えて年々と料金が高くなっていったのも痛かったのだろう。
 昨夜使ったところなんて450円だもの。
 ドライヤーが20円。
 さながらプチ・レジャーである。
 いや、ほんとそんな具合の愉しみ方で愛されないと、やっていけないと思う。
 土曜ということもあってかそんな狙いの親子連れの姿が華やいで、思っていたより賑わっていると感じた。
 あたしゃ所謂いちげんさんでございますから、洗い場の端っこでかたじけないものをかたじけなく洗いつつ観察していたのですが、やはりここにも常連というものがあり。
 してその常連同士の輪というものがあって。
 昔ながらの地域の社交場として、役割を果たしているようだった。
 

 さて、我が侘び住まいの浴室の修理だが。
 いやあ、まさか一日がかりの大工事になるとはねえ。
 職人さん曰く、長年の水漏れで下の階はぐずぐず、とな。
 けど、うちの浴室は見たところ異常がないのだ。
 いったいどこから漏れていたのか知らないが、床と壁面のすべてを削って、樹脂で分厚くコーティングしてくれたようだった。
 下地にグリーンぽい半透明のやつと。
 その上に仕上げとしてグレーのやつ。
 よって浴槽をよっこらしょと運び出して玄関先にさらし、ガスの風呂釜もどけての作業である。 
 その工事の間は立ち会うわけだからあたしゃ部屋から出られず、ずっと漫画読んだり、活字をなぞったり。
 ぼんやりしたり、しなかったり。
 がーがーと騒音もあってうるさいから、ゆったり映画でもというわけにもいかないわけで。
 樹脂のシンナー臭もただならぬことになっていて、翌朝まで窓を開け放っておかなければならないと。
 でも、おかげでこのぼろアパートも、少しは寿命が延びたのかな。
 あたしゃ銭湯をつかったせいで、いつもよりきれいになったような、そんな気分だが。
 老いた侘び住まいの方も、これできっとさっぱりしたことだろう。

 
 そうそう、この日読み耽った漫画の話だが。
 先日帰郷した折、兄貴と姉貴の娘たち全員が『NARUTO』を全巻所持していることが判明した。
 計四名のジョシである。
 だもんでその人気、あなどれないと実感。
 最近職場での闇生は、仙人モードの矛盾点をそれぞれの解釈で同僚と討論したばかりだ。
 (長門との戦いでナルトが四代目と遭遇したあと、なぜか「静」と「動」を同時に体現する「仙人モード」が復活している。それを示すのが目の下に隈。あの時、「静」を担当する妙木山の影分身は消滅しているし。それを「動」側のこちらへ口寄せする者もいないはず。四代目が正した術式は九尾を抑え込むだけのものなのだが…。)
 んが、
 まあ、それをそこでやらかすのも大人気ないので、まあヨシとした。
 なんかうれしかったし。
 どの人物が好きかを聞き忘れたのを、今になってちょっち後悔しているところだ。
 その話の流れでこのたびは『鋼の錬金術師』が人気なのを知ったよ。
 知ってさっそく工事のこの日、読み始めた。
 けれど少年漫画の通例で、出だしは単純な悪者退治的な。
 物語にエンジンがかかるまでが、辛抱のしどころなのだな。
 がっつりした能力バトル物に思わせて、そうでもないようだし。
 しっかしこれ、行き当たりばったりに話を組み上げている感触がないなあ。
 世界観を最初からある程度作り込んでから、のようだわ。
 その長所として安定しているぶん、矛盾をバネにした奇跡的な跳びは、少ないかも。
 …とは、序盤の感想ね。
 こういう少年漫画はだいたい十巻を越えてからでしょう。
 執筆前の構想やヒキダシを出しつくしてからが、勝負。
 実際に描くことで身に付けた発見やら技術やらが、情念とあいまって化学反応を起こすか否かだ。
 長期連載漫画の見どころは、そこだね。






 ☾☀闇生☆☽


 浴室なおしの職人さん、おつかれっす。
 普段は彼らの下でガードマンやってる身分だから、新鮮でした。
 お客側だものね。このたびはさ。