今、三時。
 近くで時折、どすん、と地響きがたつ。
 さては夜のうちに積った雪が、屋根から落ち始めている。 
 先日ここに感想を書いた映画『フローズン・リバー』。
 そのサウンドトラックから、音的な連想がはじまってここにつながった。
 それはビル・フリゼールのギター・トリオ・アルバムだ。
 その名もずばり、


bill frisell with dave holland and elvin jones


 今、それを流してこれを書いているところ。
 このアルバムは大御所ドラマー、エルヴィン・ジョーンズとの共演が注目されるところなのだろうが、実はその御大が、ちょっち危なっかしい。
 くわえてスタンダード曲『ムーン・リバー』のカヴァーが、アルバムの統一感を損なってもいて。
 あたしゃこのギタリストのはこれしか持ってないから、あまり大きなことは言えないんですけどね。







 お察しの通り、ジャケ買いでござんすよ。
 ええ。
 で、試聴であたった一曲目に、やられてね。
 それはまるでジャームッシュのモノクロ映画に描かれたような、夜の町の不思議。
 ジャケとこの一曲目で、買いだ。
 だもんで、このカラーのままアルバム一枚を貫いてほしかったっす。
 このジャケで行くと決めた以上、オーソドックスなやつは遠慮してほしかったっす。
 何曲かは問答無用にスキップしちゃうもんね。


 ところで、
 昨日は雨のなかのケービでござった。
 大きなマンションの外壁工事のための、その足場作りに配置された。
 いやあ、壮観だね。
 何層にも組んだ足場の地上から、更なる足場の資材をリレーで運び上げて行く、その豪快さよ。


「はいっ」


 と前屈で受け取った下からの資材。
 こいつを、うりゃっ、と持ち上げ、
 背伸びで上の階の仲間へ、


「はいっ」


 と渡す。
 それを次々と繰り返して階層を増していく。
 むろん、もしもの落下が危険ですから、下界であたしらが警戒にあたるのですが。
 新人がひとり、その力技にへばっていて、
「おらあっ、鍛えてこいよっ」
「あぶねえから声出せ、こらっ」
 などと、愛の鞭の洗礼を受けてました。
 けど、みんな明るいわ。
「喰らえ、俺の邪王炎殺拳っ」
 まさか現場でそんなツッコミを耳にするとは。
 して、なにゆえ飛影がここに、と。
 しかも、今。


 あ、また「どすん」と。
 この雪、残るのかな。
 指示では昨日と同じ現場である。
 働いたぶんしかお給金にあずかれない日給制の身分ながら、思う。
 中止になんねえかなと。
 思っちゃうよ、そりゃあ。
 俺の安全靴、滲みんだもん。
 んでもってペアを組む先輩の声が小さすぎて何言ってんだかわかんないし。
「えっ?」
 と聞き返しても、ボリューム同じなんだ。
 

 ははは。
 
 
 と、
 飛影で思いだした。
 あたしゃあれだ、
 『HUNTER×HUNTER』が連載を再開したときだけ、ジャンプを購入する派だ。
 そんな派閥たぶん無いし、
 唐突でなんなんだが。
 ま、
 言ってみりゃそんな派だ。
 で、ついでとばかりに『NARUTO』もチラ見してしまう。
 その中のダンゾウというキャラは、己が手に写輪眼を複数備えているオッサン忍である。
 その眼は人間離れした洞察力を持ち、見入るものを幻術にとりこむという設定だ。
 それを腕に移植しておるのね。
 けど、その腕の写輪眼の起動とシャットダウンは自覚できない、というのだ。
 なので自分の目でそれを確かめる、という。
 ううむ。
 自分の写輪眼に見入って、幻術にはまったりしないのだろうか。


 などと、つらつら。
 ガチガチの理詰めを愉しむタイプの漫画ではないので、いいんですがね。
 サムライ国なんつーのが出てきちゃったもんだから、かえって忍者との人口比率が気になってしまったり。
 そもそも経済は、
 流通は、
 いや、衣食住はどう支え合っているのかとか。
 ほとんどが忍者ばかりの隠れ里も、自給自足や農業、畜産業、もしくは衣服の機織りなんかが背景にあればなあ。
 あれだけ忍がいるのだから、クナイや手裏剣を打つ鍛冶屋がいたるところにないとさ。
 ええ、ええ。
 がっつりと描く必要はないのよ。ちらっ、とね。背景にさ。
 それがあるだけで、もっともっと深みが出てくると思いません?
 なんでも、アルプスの少女ハイジを作るにあたって、作り手の高畑勲宮崎駿たちは、そういう観点から始めたという。
 あのヤギのお乳を売るだけで、ハイジたちの衣服は買えるだろうかと。


 野暮だと承知の疑問を抱きつつ、毎週愉しんでおりますの。


 んで、これだ。
 この「働く」という連鎖。
 いっそ「働き合う」と言ってしまおうか。
 これが組み合って、積み重なって、社会を形成しているのだな。
 少年漫画とはいえ、
 いや、少年漫画だからこそ、それを匂わせてほしいところだ。
 物語というものは、そんな通奏低音の上にこそ、


「はいっ」


 と組み上げられるものではないのかな。
 











「おらあっ、鍛えてこいよっ」



 ☾☀闇生☆☽