ひえぇぇぇぇっいっ!
 ホっネまっでびっしょぬっれだー!


 黒澤明七人の侍』より







 だなんて、
 なにもわざわざあの名画からそんなちっちゃなセリフを抜きださなくったっていいじゃんかと。
 はい。
 いいんです。
 でもあの声がずっと耳の中でリピートしてたんですよ。今日は。
 この土砂降りのなか。
 なんか仕事がめっちゃできるらしい人がいっぱい行きかう交差点で。
 ケービ服の上に半透明のカッパを着てさ。


 おそれいりまーす。
 車が通りまーす。
 ご注意くださーい。


 ご注意も何もない。
 歩行者用信号は赤なんだもの。
 なのに連中ったら、海を渡るモーゼの気位なのか、傲然として押し渡るわけであり。
 そこへきて工事現場が隣接したものだからさ。
 やったのさ。
 この闇生がね。
 声をからして。
 またたくまに潰れるガラスの喉を酷使して。
 今度こそほんとに風邪をひくことだろう。
 そうあきらめていたところ、通りすがりに「御苦労さま」と声をかけられて、感謝。
 制止を聞かずに強引に押し通る某タクシー会社にいささか逆撫でられていただけに、厚く厚く感謝。
 そこのけ運転手の、あのぶすっとした顔のたたずまいったらないよ。いやほんと。
 

 ブスとは、
 ブスッとしているからブスなのじゃ。
 By 闇生’s Mother.


 それは決して顔の具の配置関係のことではない。
 人相に表出した内面のふてくされ。それこそがブスの正体だと。
 んなことあたしなんぞに言われたくはないだろうが。


 で冒頭のセリフ。
 呑んだくれて、木賃宿で日がな一日博打をうっているゴロツキが吐いたものだ。
 それは序盤に登場する、名もなき端役。
 百姓が侍を徴兵するという前代未聞の申し出に、当の侍たちは戸惑うばかりか、気位ばかりを振りかざしてそれを忌避してしまう。
 そんな彼らにコトの本質を投げかけて、ついに決起の決意をさせるのが、何を隠そう彼らゴロツキなのであーる。  
 

 このシーンで、
 いつも立川談志を思い出すのだ。
 談志の凄みのひとつはね、
 落語の人気者、与太郎を哲学者とみたことだ。
 だから彼だけは、与太郎をただの馬鹿として扱わない。
 とかなんとか、多分に受け売りでのたまっちまいましたが。
 物事の本質は、
 上から目線の俯瞰よりも、
 下からの仰視のほうが、露わになるようで。


 ぱん、つー、まる、みえ!



 それが言いたかったのかな、今日のあたしは。









 問題は、与太郎の居場所が、現代社会にあるのかということなのだよ。
 わかりる?




 ☾☀闇生☆☽