ワークシェアによる損失分を稼ごうと、バイトの面接に行ってきた。
 警備会社である。
 いまや手っ取り早く使ってくれるところは、そんなところぐらいになってしまった。
 そんなおっさんなのだ。
 面目ない。
 実はこの仕事、経験があって。
 十代の終わりから二十代の初めまでの苦い、孤独な日々の象徴がこのバイトでござった。
 その数ヶ月間、他人との会話といえるコミュニケーションは、絶無。
 コンビニで弁当をあたためるか否かの店員とのやりとりが、かろうじてそれと言えるくらい。
 念のために断わっておくが、ケータイもメールもネットもない時代である。
 夜勤を終えて明け方に下番報告を入れると、そのまま日勤についてくれと懇願され。
 五時に上がって移動し、
 次の勤務を八時に開始し、
 上がりの十七時にまた懇願されて二十時から翌五時まで。
 その報告を入れると引き続き日勤を懇願され…。
 そんなアホみたいな、
 いや、
 違うな。
 アホになっても当然のシフトを強いられ続けて、挙句、ほんとにアホになってしまって、売り言葉に買い言葉だ。


「あ。んじゃ辞めます」


 労働基準法なんぞ念頭にないのだ。
 足もと見られて、そら見たことかと、馬鹿を見た。


 印象に残っている同僚といえば、自称元ホストの三軍。
 と、一世風靡セピアの二軍だか、三軍のやつ。
 なんなんだ、その補欠制度は。
 ホストは同じ経営者が価格のランクで二軍、三軍と店を分けているとかで。
 つまりは高級店から大衆店までを、ということ。
 その大衆店では知り合った某有名AV女優と友だち感覚でふにふにしたり、されたりの仲だったぞと。
 そいつ、渥美清みたいな風貌で。
 なんかむくむくしてて。
 外見ではなくて、会話の包容力で指名を稼いでいたとかなんとかのたまっておった。
 一方セピアの三軍は、こち亀両さん
 ファンにみつかるのはイヤだと、内勤に回してもらっていたよ。
 

 ま。
 そんなとこだった。


 あの時代、警備員のバイトと言えば何よりもメタルのあんちゃんだった。
 ロン毛の茶髪のバンドマンが、かったるそうに赤い誘導灯を振っている。
 テレビドラマに現れる工事現場の警備員は、大概そんな作りになっていた。
 それから時は過ぎ、随分とその辺も改められたのだろう。
 このたびの面接では髪型やらのチェックから、本人確認のこまごまとした手続きなど、およそメタルのあんちゃんには突破できないであろう難関が立ちはだかっており。
 あたしなんぞは昔を知っているばかりに、散歩ついでに立ち寄ったような風情で顔を出してしまったものだから、恐縮すること頻りで。
 かえって開き直っちゃった。
 なんせ同席したほかの応募者はびしいぃぃっとスーツで決め込んで、折り目正しいお辞儀をし、細部にわたって面接官に質問をしていたのである。
 なんでも今月で前職から放たれて、しかも若くして妻子もちである。
 隣の面接ブースはブースで、年配の応募者が日勤・夜勤の連続を希望して、それを面接官に諫められているありさま。
 んが、
 破産宣告のあと復権していない人は勤務させられないという規定を知って、激しく落胆されておった。
 身辺の簡単な調査があるのだという。


 あたしなんざ、一個も質問しないもの。
 





 てか、周囲の真剣さに圧倒されて言葉がない。


 ☾☀闇生☆☽