壁の言の葉

unlucky hero your key

 ゆうせんのNEW DISCチャンネルでMr.Bigのライヴが繰り返し紹介されている。
 こういうジャンルに夢中になった時期もあったなあ。
 と感慨深い。
 特に、このバンドは全員が超絶なテクニックの持ち主で、それでいてエンターテイメントに徹しているから、つくづくプロレスの醍醐味であると確信した。
 それもアメリカのね。
 華麗な空中技やロープの反動をつかったコンビネーション、鍛え上げられた筋肉美とヒール/ベビーフェイスの演じ分け。
 あたしが聴くロックのなかではたとえばレディオヘッドが、その意味でこれの対極にあって。
 こちらはようするにガチのストリートファイトだ。
 娯楽というより、もっと深いところに訴えてくる。
 ともすれば引きずる。
 

 言うまでもなく、どちらもステキだが。

 
 それはそうとこのライヴ盤を聴いていて気がついた。
 それは東京でのパフォーマンスらしい。
 なにかとヴォーカルのエリックが「トキオー」と客席に呼び掛ける。
 来日アーティストにおなじみの光景なのだが、これって彼ら、母国のライヴでも同じように会場の地名を連呼するのね。
「ハロー、シカゴー」
 みたいに。
 それはマドンナであれ、ヴァンヘイレンであれ、煽るときはそうしていると思う。
 徹底して連呼。
 けれど、この慣習って日本にはあまりないような気がするのだ。
 仙台だの福岡だの水戸だの札幌だのと叫んでいるのかな?
「おいおい元気がないぜ、津」
「愛してるぜ、銚子」
「塩釜べいべー」
 なんか肌にぴたっとこないような。
 昔、YMOのウィンターライヴツアーでは、あった。
 『テクノポリス』という曲でキョージュが「トキオ」とヴォコーダーでやるはずのところを、拡声器でその地名を叫んでいた。
 ま、ご愛敬といった風情でしたが。


 日本人は外来の娯楽のなかに現実逃避、というか遊離を求めているのだと思う。
 地名は、それを引きとめるキーワードで。
 現実を、もっとも象徴するものとなっていて。
 なんて、書きつつ。んなこと考えてんの俺だけだったりしてと。


 あ。
 今日はがん検診の結果を聞きに行くのだ。
 そろそろ出かけねば。








 ☾☀闇生☆☽