先日、睡眠時無呼吸症候群の検査入院を経て、紹介された歯科医院にマウスピースの型を取りに行ってきた。
都心では場所によって歯医者が異様に密集している。
注意してみると、あっちにもこっちにも歯ブラシの看板である。
この現状はコンビニより多いと揶揄されるくらいで。
いや、実感としては自販機より多いかもしれぬわいと。
だもんだから日々サービスの狂騒が、
もとい競争が激化しており、それはそれは至れり尽くせりの待遇であるからして、あたしなんぞは恐縮してしまうほどだ。
白旗パタパタさせた「すんません」な心持ちで、女医さんに口の中をおまかせしているのであーる。
それぞれの医院は常に最先端の機材を整え、最新の治療術を取り入れようとするのは無論のこと、待合室の調度、BGMやらの演出にまで神経を行きわたらせている模様である。
さもありなん。
歯医者ほど評判が作用するものもないだろうからだ。
「あそこの先生は、すこしも痛くなくやってくれる」
なんてのも、実際はやたらめったら麻酔を使うだけかもしれぬ。
けれど、処女のように怯えきった初診の立場としては、そんな噂が大きな心のよりどころとなるものなのだ。
となれば、なんとなく雰囲気がいいというだけで、それはそれですでに麻酔の役割をたすけてもいるし。
やさしければ、なおさらで。
上手ならば儲けもんなのである。
検査入院の施設も、さながらホテルのごときひと時でござった。
けれど、紹介してくれたこのたびの医院は、昔ながらの歯医者さん。
自宅の一部を改築してはじめたような、そんな地元密着型である。
近所の子供たちの名前を先生がすべて知っているような、ね。
実際、あたしのまえに治療してもらっていた子らが、先生とそんな関係で微笑ましかった。
「次は妹も一緒につれて来る」
なんつってさ。
それを待つ友だちは待合室でクレヨンしんちゃんを熟読してんだ。
で、ときどきなんか悪だくみして、耳打ちしてさ。
鼻ほじって。
汗くせえガキんちょがよ。
結構なガキんちょぶりじゃんか。
どうりで予約がすぐとれたわけだわい。
機材も年期が入っているんだな、これが。
椅子なんか擦り切れててね。
塗料があちこち剥げててね。
先生は若いから、きっと親から継いだと思われるのさ。
顧客もろともごっそりとバトンタッチである。
歯科医の密集地なんざ、入れ替わりが激しくてね。
競争の原理、
いや狂騒の、と言っちまおうか。
言っちまってるじゃんか。
じゃんか、じゃんか。
会計と助手を兼任する女医さんが、女子バレーの日本代表某に激似で、びっくった。
本人かと思ったよ。
そんなこんなの帰り道、
初めての場所なのでぶらりとその界隈を散歩した。
宗派の違うお寺が肩を寄せ合うように隣り合っている。
浄土宗、
浄土真宗、
曹洞宗…と。
こちらは逆に、豪勢なほど引くし、
腰低く、揉み手してすり寄ってこられても、かなわん。
して、しのぎを削りあうほど熱心なのも、よろしくないと。
この光景もまた、日本ならではなのかな。
☾☀闇生☆☽
どうやら、睡眠時の動悸は無呼吸が原因じゃないな。
循環器系か。